訃報 〓 ゲイリー・グラフマン(92)米国のピアニスト

2025/12/29

米国のピアニスト、ゲイリー・グラフマン(Gary Graffman)が27日、ニューヨークの自宅で亡くなった。97歳だった。若くして米国を代表するピアニストとして活躍した後、腕の故障で後進の指導に専念。ラン・ランやユジャ・ワン、クレア・フアンチやリディア・アルティミフら多くの音楽かをその門下から輩出した。

ユダヤ系のロシア移民を両親に、ニューヨーク・マンハッタンの生まれ。3歳でピアノを始め、7歳でカーティス音楽院に入学、イザベル・ヴェンゲロヴァ、ヨゼフ・ホフマンらに師事した。10年後に卒業し、ユージン・オーマンディ指揮するフィラデルフィア管弦楽団と共演してソリストとしてデビュー。1949年にはカーネギーホールのレベントリット国際ピアノ・コンクールで優勝して国際的な活躍をスタートさせた。

その後、ウラジーミル・ホロヴィッツやルドルフ・ゼルキンの下で研鑽を積み、チャイコフスキー、ラフマニノフ、プロコフィエフ、ベートーヴェン、ブラームス、ショパンを主要なレパートリーとしながら、欧米の著名なオーケストラと共演を重ねた。また、マールボロ音楽祭などに数多く客演。派手とは無縁の音楽的知性で名声を確立した。しかし、1977年に右手の薬指を捻挫したことが原因で1979年には局所性ジストニアを発症して右手が不自由になり、コンサート活動からは引退した。

翌1980年、母校カーティス音楽院の教授に迎えられて教育活動をスタートさせ、1995年から2006年かけては学長、学長を辞した後は教授に戻って2021年まで指導を続けていた。また、室内楽演奏の指導にも熱心で、ヴァイオリニストのヒラリー・ハーンの室内楽の師でもある。

録音も多数残されており、1979年のウディ・アレン監督の映画『マンハッタン』にはガーシュウィンの《ラプソディ・イン・ブルー》が使われている。

写真:China Daily





関連記事

  1. 訃報 〓 レイフ・セーゲルスタム(80)フィンランドの指揮者・作曲家

  2. ニューヨーク発 〓 メトロポリタン歌劇場の新しい《指環》に暗雲、共同制作のイングリッシュ・ナショナル・オペラへの助成削減で

  3. エバンストン発 〓 原田慶太楼に2023年の「ゲオルグ・ショルティ指揮者賞」

  4. シカゴ発 〓 シカゴ響が「ムーティ最後のシーズン」2022/2023シーズンの公演ラインナップを発表、注目集める客演指揮者

  5. チャールストン発 〓 米国の音楽祭でもキャンセル始まる、スポレート芸術祭USAが開催中止に

  6. ボストン発 〓 ヘンデル・ハイドン協会が次期芸術監督に英国の指揮者ジョナサン・コーエン

  7. ニューヨーク発 〓 シティ・オペラの理事会が総監督を解任、後任に音楽監督兼首席指揮者のコンスタンチン・オルベリアン

  8. アスペン発 〓 ソプラノのルネ・フレミングが演出家デビュー

  9. アスペン発 〓 ルネ・フレミングがアスペン音楽祭のオペラ部門の芸術監督に

  10. シカゴ発 〓 ラヴィニア音楽祭が中止を発表

  11. ロサンゼルス発 〓 ジェームズ・コンロンがロサンゼルス・オペラとの契約を延長

  12. クリーブランド発 〓 クリーブランド管が2022/2023シーズンの公演ラインナップを発表

  13. ニューヨーク発 〓 ニューヨーク・フィルが今シーズンの公演をすべてキャンセル

  14. ロサンゼルス発 〓 夏の風物詩「ハリウッドボウル」も開催中止

  15. 訃報 〓 ズデニェク・マカール(87)チェコ出身の指揮者

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。