訃報 〓 アントン・ガルシア・アブリル(87)スペインの作曲家

2021/03/18
【最終更新日】2023/02/06

スペインの作曲家アントン・ガルシア・アブリル(Antón García Abril)が17日に首都マドリードで亡くなった。87歳だった。交響曲、室内楽、歌曲、映画音楽まで数多くの作品を作曲、現代スペインを代表する作曲家として知られる。また、マドリードの王立音楽院の作曲部門の責任者を長く務めた。

生ハム「ハモン・セラーノ」で知られるスペイン中東部アラゴン州のテルエル生まれ。マドリード音楽院で学んだ後、作曲はヴィート・フラッツィ、管弦楽法などをパウル・ファン・ケンペンに学び、1964年には奨学金を得てローマのサンタ・チェチリア国立音楽院アカデミーに留学した。

帰国後、作曲家グループ「新しい音楽」の創設に加わり、1960年代から「マカロニ・ウエスタン」と呼ばれる西部劇映画の音楽で注目を集めた。その後、前衛的な音楽から離れ、200を超える映画やテレビ・ドラマの音楽を作曲。2014年にはスペイン映画アカデミーからその業績に対して金メダルが授与されている。

マドリード王立音楽院では1974年から2003年まで後進の指導に当たり、1982年にはマドリードのサン・フェルナンド王立芸術アカデミーのメンバーにも選出された。1989年にはアラゴン州議会の委嘱を受けて州歌を作曲。1994年にスペイン音楽大賞を受賞するなど授賞多数。

晩年まで旺盛な作曲活動を展開。唯一のオペラ《神の言葉》が1997年にプラシド・ドミンゴ主演でテアトロ・レアルで初演されている。作曲を委嘱したヴァイオリニストのヒラリー・ハーンが自ら演奏したヴァイオリンのための《第3の溜息》、《無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ》6部作など、録音の残る作品も多い。

2008年からはバレンシアのサン・カルロス王立芸術大学のメンバー。2018年には85歳の誕生日を祝うアルバムもリリースされ、サン・フェルナンド王立芸術アカデミーで記念コンサートも行われている。

写真:Real Academia De Bellas Artes De San Fernando





関連記事

  1. 訃報 〓 マイケル・トゥリー(84)米国のヴィオラ奏者

  2. チューリッヒ発 〓 チューリッヒ歌劇場が新製作の《サロメ》をライブ・ストリーミング

  3. リエージュ発 〓 ワロン王立オペラが「Opera at Home」というストリーミング配信をスタート

  4. オスロ発 〓 ノルウェー放送管の首席指揮者に韓国系米国人のホリー・ヒョン・チェ

  5. 訃報 〓 フー・ツォン(86)中国生まれの英国のピアニスト

  6. エーケレー発 〓 ドロットニングホルム宮殿劇場の次期音楽監督にフランチェスコ・コルティ

  7. ロンドン発 〓 ネトレプコとの共演断られ、夫君のエイヴァゾフが新制作のロイヤル・オペラ《イル・トロヴァトーレ》を降板

  8. リバプール発 〓 ロイヤル・リバプール・フィルが首席指揮者のドミンゴ・インドヤンとの契約を延長

  9. ライプツィヒ発 〓 2024年の「バッハ・メダル」はアンドレアス・シュタイアーに

  10. 訃報 〓 ハリー・クプファー(84)ドイツの演出家

  11. ロンドン発 〓 ソンドラ・ラドヴァノフスキーがロイヤル・オペラの日本ツアーへの出演をキャンセル

  12. ボーフム発 〓 ボーフム響の音楽総監督を務めるトンチエ・チュアンが任期満了の2025/2026シーズンで退任

  13. パリ発 〓 指揮者のクリスティアン・マチェラルがフランス国立管との契約を延長

  14. ハンブルク発 〓 ハンブルク交響楽団がマルタ・アルゲリッチとの公演をライブ配信

  15. ブラウンシュヴァイク発 〓 州立劇場が《蝶々夫人》のポスター・デザインを変更、旭日旗を連想させるという抗議受け

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。