スペインの作曲家アントン・ガルシア・アブリル(Antón García Abril)が17日に首都マドリードで亡くなった。87歳だった。交響曲、室内楽、歌曲、映画音楽まで数多くの作品を作曲、現代スペインを代表する作曲家として知られる。また、マドリードの王立音楽院の作曲部門の責任者を長く務めた。
生ハム「ハモン・セラーノ」で知られるスペイン中東部アラゴン州のテルエル生まれ。マドリード音楽院で学んだ後、作曲はヴィート・フラッツィ、管弦楽法などをパウル・ファン・ケンペンに学び、1964年には奨学金を得てローマのサンタ・チェチリア国立音楽院アカデミーに留学した。
帰国後、作曲家グループ「新しい音楽」の創設に加わり、1960年代から「マカロニ・ウエスタン」と呼ばれる西部劇映画の音楽で注目を集めた。その後、前衛的な音楽から離れ、200を超える映画やテレビ・ドラマの音楽を作曲。2014年にはスペイン映画アカデミーからその業績に対して金メダルが授与されている。
マドリード王立音楽院では1974年から2003年まで後進の指導に当たり、1982年にはマドリードのサン・フェルナンド王立芸術アカデミーのメンバーにも選出された。1989年にはアラゴン州議会の委嘱を受けて州歌を作曲。1994年にスペイン音楽大賞を受賞するなど授賞多数。
晩年まで旺盛な作曲活動を展開。唯一のオペラ《神の言葉》が1997年にプラシド・ドミンゴ主演でテアトロ・レアルで初演されている。作曲を委嘱したヴァイオリニストのヒラリー・ハーンが自ら演奏したヴァイオリンのための《第3の溜息》、《無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ》6部作など、録音の残る作品も多い。
2008年からはバレンシアのサン・カルロス王立芸術大学のメンバー。2018年には85歳の誕生日を祝うアルバムもリリースされ、サン・フェルナンド王立芸術アカデミーで記念コンサートも行われている。
写真:Real Academia De Bellas Artes De San Fernando
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