ザルツブルグ復活祭音楽祭 〓 2023年から毎年違う指揮者とオーケストラで

2019/09/19
【最終更新日】2019/10/17

ザルツブルグ復活祭音楽祭が新しい路線に舵を切った。音楽祭の運営をめぐり、芸術監督を務める指揮者のクリスチャン・ティーレマン(Christian Thielemann)と、2022年から総監督に就任するニコラウス・バッハラー(Nikolaus Bachler)の対立が表面化していたが、現地からの報道などによると、理事会はバッハラーに軍配を上げた。ティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデン(ザクセン州立歌劇場管弦楽団)の出演は2022年をもって終了し、2023年からは毎年違う指揮者とオーケストラが出演するスタイルに変更されるという。この決定に対するティーレマンからのリアクションはまだない。

二人の対立の直接的な原因は、オペラ演目の選定をめぐって。ティーレマンは2020年に《ドン・カルロ》、2021年に《トゥーランドット》、2022年に《ローエングリン》、2023年に《エレクトラ》の上演を希望したが、バッハラーはバイエルン州立歌劇場の総裁を退任して音楽祭の総監督に就任する2022年からの演目については、ティーレマンの計画を認めなかった。バッハラーは2022年は《魔弾の射手》、2023年は《さまよえるオランダ人》に変更するよう指示を出したという。

これにティーレマンは猛反発、キャスティングも既に済んでいると抗議したが、バッハラーも譲らなかった。納得しないティーレマンは理事会に対して、バッハラーとは意見が合わないこと、これから一緒に仕事が続けられないという主旨の書簡を提出。さらにそのことをマスコミに公表したことで対立が表面化した。

ザルツブルグの復活祭音楽祭は1967年、20世紀を代表する巨匠指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンが創設したもの。2012年を最後にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の出演がなくなって存続が危ぶまれたが、2013年からティーレマンと彼が首席指揮者を務めるシュターツカペレ・ドレスデンを迎えて再出発したことで息を吹き返した。それだけにティーレマンは音楽祭にとっての“中興の祖”として存在感を高めていた。

理事会の決定では、2022年のオペラはティーレマンの希望を入れて《ローエングリン》としたが、2023年からは大きく路線転換。バッハラーの構想では、バレエやダンスなどのプログラムも取り込んで総合芸術祭的なものに姿を変える。音楽祭は10日ほどの会期中、1つのオペラ、2つのオーケストラ・コンサート、1つの合唱入りのオーケストラ・コンサートを組み合わせたプログラムが、2日間の休日を挟んで2回行われるスタイルが定着しているが、その見直しも行われるという。

理事会を終えて、ザルツブルク州のヴィルフリード・ハスラウアー知事は「私たちは、音楽祭におけるクリスチャン・ティーレマンとザクセン州立管弦楽団の、多くの芸術的および音楽的功績に非常に感謝しています。この非常に成功した10年を受けて、2022年からの音楽祭はニコラウス・バッハラー総監督と新しい章を開きます」というコメントを発表している。

写真:Salzburg Easter Festival / Matthias Creutziger


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