コシツェ発 〓 文化大臣が国立劇場と国立美術館の館長を解任したことにスロヴァキアで大きな反発、コシツェ国立フィルの首席指揮者が抗議の辞任

2024/08/20

スロバキアの文化大臣が国立劇場の総支配人と国立美術館の館長を解任したことをめぐり抗議の動きが広がっている。コシツェ国立フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めるロベルト・ジンドラ(Robert Jindra)が今月に入って辞任、国外でも、ヨーロッパのほとんどのオペラハウスが所属する「オペラ・ヨーロッパ」が大臣の決定がEU憲章に違反しているとの声明を出す騒ぎになっている。

スロバキアではこの4月初旬に大統領選挙が行われ、親ロシア姿勢を掲げ、ウクライナへの軍事支援を停止した左派のフィツォ首相に近いペテル・ペレグリニ氏が親欧米派の対立候補を破って当選した。直後の5月、フィツォ首相が銃撃を受けるという事件も発生、国内には不穏な空気が流れていた。

そんな中で、マルティナ・シムコヴィチョヴァー文化大臣が国立美術館のアレクサンドラ・クサ館長、国立劇場の総支配人マテイ・ドルチュカを立て続けに解任。これに多くの文化人が反発。ジンドラの辞任だけでなく、首都ブラチスラバでは数千人が参加する反政府デモも2回起きている。

一方、国外でも「オペラ・ヨーロッパ」が、「国の文化機関の総責任者の地位を政治活動と混同し、その活動に繰り返し政治を持ち込んだ」という理由で解任されたドルチュカの業績を称え、返す刀で「氏の解任理由を断固として否定する。また、EUに対し、スロバキアの動向を注意深く監視しし、欧州全域の文化機関の独立性と表現の自由を守るよう強く要請する」という声明を発表した。

ジンドラはチェコのプラハ生まれの47歳。2021年からコシツェ国立フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、2022年からはプラハの国立劇場のオペラの音楽監督を務めている。

写真:Czech Music Information Centre


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