訃報 〓 韓中傑(97)中国の指揮者

2018/04/04
【最終更新日】2023/02/06

中国音楽界の最長老で指揮者の韓中傑(Han Zhongjie)が3日、北京市内の305病院で亡くなった。97歳だった。戦後の中国のクラシック音楽界の草分けの一人。米中国交回復後の1980年に訪米してボストン交響楽団を指揮、米国のオーケストラを指揮した最初の中国人としても知られる。

韓は1920年、上海の生まれ。上海市のオーケストラでフルート奏者を振り出しに音楽界に入り、重慶に創設された中国交響楽団の首席フルート奏者に就任。戦後1951年には東ベルリンで行われた第3回「世界青年祭」に中国代表団の一人として参加した。

1954年、中央歌舞団を指揮して指揮者デビュー。翌年、ワルシャワで開かれた第5回「世界青年祭」に中国青年オーケストラを率いて客演、ヨーロッパで初めて中国のオーケストラの演奏を実現させた。さらに翌年、中国最初の国立オーケストラとして中央楽団が創設されると、レニングラード音楽院に留学。帰国後の1961年に中央楽団を指揮して、ベルリオーズの幻想交響曲の中国初演を成功させた。

1966年に文化大革命が始まると、西洋音楽の演奏は禁止され、音楽家は「走資派」として批判を受ける事態に。韓は中央バレエ団などを指揮して、もっぱら「紅色娘子軍=こうしょくじょうしぐん」などの革命歌劇を指揮。それらを引っ提げて、アルバニア、ルーマニア、旧ユーゴスラビアなどを巡業した。

中央楽団への復帰は文化大革命が収束した1976年。しかし、クラシック音楽の演奏会が普通に開かれるまでにはなお10年ほど必要で、その間は、指揮者の李徳倫(り・とくりん、1917∼2001)、作曲家の呉祖強(ご・そきょう、1927-2022)ら、ソ連留学組を中心に演奏団体の復活、音楽家の復帰、育成に奔走した。

改革開放政策が軌道に乗り始めた1980年代後半になって指揮活動を本格化させた。中央楽団が1996年に中国国家交響楽団に改組されると、顧問に就任。2010年には90歳を祝うコンサートが北京で行われ、弟子の指揮者たちに混じり、車椅子に座ってオーケストラを指揮、元気な姿を見せていた。

写真:


関連記事

  1. 東京発 〓 クラシック音楽の専門誌「レコード芸術」が7月号で休刊、70年超の歴史に幕

  2. デトロイト発 〓 デトロイト響の首席客演指揮者にノルウェーのタビタ・ベルグルンド

  3. ケルン発 〓 ケルン市立歌劇場が新シーズン、2023/2024シーズンの公演ラインナップを発表

  4. ミュンヘン発 〓 ミュンヘン市長もゲルギエフに“最後通牒”、ロシアのウクライナ進攻めぐり

  5. リエージュ発 〓 ワロン王立オペラが「Opera at Home」というストリーミング配信をスタート

  6. サンフランシスコ発 〓 カーテンコールでプロポーズ、結果は大成功!

  7. 訃報 〓 辻久子(95)日本のヴァイオリン奏者

  8. ブレゲンツ発 〓 ブレゲンツ音楽祭は開催断念、グラフェネック音楽祭は開催を表明

  9. ベルリン発 〓 ベルリン・フィルが《マゼッパ》の公演を断念、新型コロナで主役降板

  10. エレバン発 〓 ハチャトゥリアン国際コンクールの指揮部門で出口大地が第1位

  11. リーズ発 〓 リーズ国際ピアノ・コンクールはカザフスタンのアリム・バイゼンバエフが優勝、小林海都が2位に

  12. ブリュッセル発 〓 オペラ雑誌の年間賞「Oper! Awards2025」発表、授賞式がモネ劇場

  13. 訃報 〓 レオン・フライシャー(92)米国のピアニスト

  14. ベルリン発 〓 ベルリン・ドイツ・オペラが《ヘリアーネの奇跡》の再演を急きょ中止、テノール歌手の体調不良で

  15. ミュンヘン発 〓 ミュンヘン市長がゲルギエフを解職

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。