訃報 〓 フリードリヒ・チェルハ(96)オーストリアの作曲家

2023/02/15
【最終更新日】2023/02/16

オーストリアの作曲家フリードリヒ・チェルハ(Friedrich Cerha)が14日、ウィーンで亡くなった。96歳だった。現代音楽の最前線で活動、未完成だったベルクのオペラ《ルル》を完成させた。また、新ウィーン楽派への強い愛着をみせ、ベルク、シェーンベルク、ヴェーベルン作品の解釈者として知られた。

1926年、ウィーン生まれ。第二次世界大戦が始まると、ナチス・ドイツの迫害を逃れるため、チロルのアルプスに一時期避難している。子どもの頃から作曲に関心を持ち、現在のウィーン音楽・舞台芸術大学でヴァイオリン、作曲、音楽教育を、ウィーン大学で音楽学、ドイツ語およびドイツ文学、哲学を学んだ。

1958年、オーストリアの後輩作曲家クルト・シュヴェルツィクとアンサンブル「ディ・ライエ」を結成。1959年から母校で教鞭を執り、1969年に助教授、1976年に正教授に任命され、作曲、記譜、新しい音楽の解釈を担当した。

ベルクのオペラ《ルル》を完成させたのは1970年代後半になってからで、1979年にはピエール・ブーレーズの指揮でパリで初演された。4年後にウィーン国立歌劇場でも演奏されている。

ブレヒトの戯曲を原作とした初の自作オペラ《バール》は代表作の一つで、1981年にザルツブルクで初演され、その後のウィーン初演の際には、作曲者自身が指揮台に立った。オペラでは、ウィーン国立歌劇場の委嘱作《シュタインフェルドの巨人》が2002年に初演された。

管弦楽曲には1960年から1972年にかけて作曲された《シュピーゲル》の第1番から第7番、1981年の《ネツヴェーク》などがあり、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団150周年を記念して献呈された《大管弦楽のためのインパルス》が1993年に発表されている。

1986年にオーストリア国家大賞、2005年にオーストリア科学・芸術栄誉賞、2008年にウィーン州功労金賞など受賞多数。また、2019年には母校の名誉会員に選出されており、ウルリケ・シック学長はオーストリアのメディアに「彼はアーティストとして、教師として、そして何よりも民主主義のために譲れない姿勢を持った人として、常に私たちのお手本でした」と語っている。

写真:Universität für Musik und darstellende Kunst Wien / Mathias Swoboda)





関連記事

  1. 訃報 〓 ジョーゼフ・ホロヴィッツ(95)英国の作曲家

  2. 訃報 〓 永田穂(93)コンサート・ホールの音響設計の世界的パイオニア

  3. ウィーン発 〓 オーストリア造幣局がザルツブルク音楽祭100周年記念銀貨を発行

  4. マグデブルク発 〓 マグデブルク劇場の次期音楽総監督にアンナ・スクリレーワ

  5. 訃報 〓 アンドレ・プレヴィン(89)米国の指揮者・作曲家・ピアニスト

  6. グラインドボーン発 〓 代役の呼び寄せに音楽祭がヘリコプターを手配、老舗の貫禄

  7. ハンブルク発 〓 ハンブルク・バレエ団がマカオ公演をキャンセル

  8. トゥールーズ発 〓 キャピトル国立管の次期音楽監督にフィンランドの指揮者タルモ・ペルトコスキ

  9. モントリオール発 〓 モントリオール響がロシアの若手ピアニストの出演をキャンセル、ウクライナ・コミュニティーと楽団員の反発で

  10. ライプツィヒ発 〓 ゲヴァントハウス管弦楽団の「マーラー・フェスティバル」は2023年に仕切り直し

  11. リヴィウ発 〓 指揮者オクサーナ・リーニフが結婚

  12. パンプローナ発 〓 ナヴァラ響の次期首席指揮者に香港出身のペリー・ソー

  13. ロンドン発 〓 ロイヤル・オペラの首席客演指揮者にスペランツァ・スカップッチ

  14. パリ発 〓 ポリーニが再延期していたリサイタルを体調不良でキャンセル

  15. 訃報 〓 フランコ・ファンティーニ(99)イタリアのヴァイオリン奏者, スカラ座管弦楽団の元コンサートマスター

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。