ニューヨーク発 〓 メトロポリタン歌劇場の新しい《指環》に暗雲、共同制作のイングリッシュ・ナショナル・オペラへの助成削減で

2023/01/20

英国政府が文化予算の大幅削減に舵を切った問題で、補助金の配分リストから外されたイングリッシュ・ナショナル・オペラ(English National Opera=ENO)に対して1回限りの補助金が追加配分されることになった。国営宝くじによる資金1,146万ポンド(約18億500万円)が配分されるという。

英国では政府の文化予算の配分を「アーツ・カウンシル」が行っており、今回の予算削減で中核の「アーツ・カウンシル・イングランド」への配分が5000万ポンド(約83億4,028万円)以上削減されるという大なたが振るわれた。

それを受け、ENOについては配分リストから外され、これまで配分されていた年間1,260万ポンド(約21億円)の補助金が打ち切られ、代わりに3年間で1,700万ポンド(約28億3,600万円)の一時金の支給に変更された。また、拠点をロンドンからマンチェスターに移し、新しいビジネスモデルの開発を模索することも求められている。

これにENOは「観客の7人に1人は35歳以下、主な出演者の5人に1人は多様な人種、50%以上の観客はオペラが初めてと、アーツ・カウンシルが設定した基準をすべて満たしているのに」と猛反発。歌手のブリン・ターフェルらによる削減反対の署名運動も行われている。そのため、新たな補助金が支給されることになったとみられる。

ただ、追加支給が決まっても、2021/2022シーズンからスタートした新しいワーグナー《ニーベルングの指環》4部作の上演を完結させるのは難しいという。新しい《指環》はリチャード・ジョーンズが新演出を手掛けており、2022/2023シーズンは第1弾の《ワルキューレ》に続いて第2弾の《ラインの黄金》が登場する。

一方、そんな状況に頭を抱えているのが、ENOとの共同制作で2025/2026シーズンから上演をスタートさせる予定でいたニューヨークのメトロポリタン歌劇場。ピーター・ゲルブ総裁はAP通信の取材に対して「ENOが制作を続けられる状況にない以上、彼らと一緒に制作を行うことは明らかに不可能だ」と、諦めの境地にいる。

メトロポリタン歌劇場では現在、2010年からロベール・ルパージュ演出によるプロダクションを上演している。ただ、これはこれで45トンの巨大なセットを動かす必要があり、頻発する不具合などから約1600万ドル(約20億5,900万円)もの負担を強いられているだけに、ゲルブ総裁のイライラは募るばかり。

写真:English National Opera


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