20世紀を代表するオペラ歌手の一人、スペインのメゾ・ソプラノ歌手テレサ・ベルガンサが13日に亡くなった。89歳だった。高度な技術に裏付けられた知性に富んだ歌唱、魅力的な舞台姿で多くの音楽ファンを魅了。バルセロナ五輪やセビリア万博の開会式などで歌い、1994年には女性として初めてスペイン王立芸術アカデミー会員に選ばれた他、晩年は後進の指導に尽力した。
1935年、マドリード生まれ。マドリード音楽院で声楽に加えてピアノ、チェロ、オルガンを学び、1955年にコンサート・デビュー。1957年にはフランスのエクス=アン=プロヴァンス音楽祭の《コジ・ファン・トゥッテ》でドラベッラを歌ってオペラの初舞台を踏んだ。その年、ミラノ・スカラ座にもデビューしている。
翌年には英国のグラインドボーン音楽祭にも登場。1959年にはヘルベルト・フォン・カラヤン指揮のモーツァルト《フィガロの結婚》のケルビーノ役でウィーン国立歌劇場に、ロッシーニ《セビリアの理髪師》のロジーナ役でロンドンのロイヤル・オペラにもデビューした。また、1967年にはニューヨークのメトロポリタン歌劇場の《フィガロの結婚》出演するなど、欧米の主要なオペラハウスを席巻した。
《フィガロの結婚》のケルビーノ役、《セビリアの理髪師》のロジーナ役などを得意としたが、中でもカルメンは、クラウディオ・アバド指揮の録音で、色気だけでなく気品も兼ね備えたキャラクターを表現、新たなカルメン像を確立して話題を集めた。オペラでの活躍に加え、高域から低域まで滑らかな声で、スペイン歌曲やサルスエラの舞台も多い。1991年にはスペインの「アストゥリアス公賞」の芸術・文学部門を他の6人のスペイン人歌手とともに受賞している。
ステージからの引退は2008年。2014年からは、フランスとの国境の街パンティコサの音楽祭にマスタークラスを開講、若い才能の指導に当たった。2018年には国際オペラ賞「オペラ・アワーズ」の生涯功労賞を受賞。マドリード市から50キロ、アバントス山の斜面に広がるサン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルにあるホールがコンサートホールが「テレサ・ベルガンサ・オーディトリアム」と改名している。
写真:Universal Music
音楽プロフィールはこちら ▷
この記事へのコメントはありません。