訃報 〓 テレサ・ベルガンサ(89)スペインのメゾ・ソプラノ歌手

2022/05/13
【最終更新日】2023/02/06

20世紀を代表するオペラ歌手の一人、スペインのメゾ・ソプラノ歌手テレサ・ベルガンサが13日に亡くなった。89歳だった。高度な技術に裏付けられた知性に富んだ歌唱、魅力的な舞台姿で多くの音楽ファンを魅了。バルセロナ五輪やセビリア万博の開会式などで歌い、1994年には女性として初めてスペイン王立芸術アカデミー会員に選ばれた他、晩年は後進の指導に尽力した。

1935年、マドリード生まれ。マドリード音楽院で声楽に加えてピアノ、チェロ、オルガンを学び、1955年にコンサート・デビュー。1957年にはフランスのエクス=アン=プロヴァンス音楽祭の《コジ・ファン・トゥッテ》でドラベッラを歌ってオペラの初舞台を踏んだ。その年、ミラノ・スカラ座にもデビューしている。

翌年には英国のグラインドボーン音楽祭にも登場。1959年にはヘルベルト・フォン・カラヤン指揮のモーツァルト《フィガロの結婚》のケルビーノ役でウィーン国立歌劇場に、ロッシーニ《セビリアの理髪師》のロジーナ役でロンドンのロイヤル・オペラにもデビューした。また、1967年にはニューヨークのメトロポリタン歌劇場の《フィガロの結婚》出演するなど、欧米の主要なオペラハウスを席巻した。

《フィガロの結婚》のケルビーノ役、《セビリアの理髪師》のロジーナ役などを得意としたが、中でもカルメンは、クラウディオ・アバド指揮の録音で、色気だけでなく気品も兼ね備えたキャラクターを表現、新たなカルメン像を確立して話題を集めた。オペラでの活躍に加え、高域から低域まで滑らかな声で、スペイン歌曲やサルスエラの舞台も多い。1991年にはスペインの「アストゥリアス公賞」の芸術・文学部門を他の6人のスペイン人歌手とともに受賞している。

ステージからの引退は2008年。2014年からは、フランスとの国境の街パンティコサの音楽祭にマスタークラスを開講、若い才能の指導に当たった。2018年には国際オペラ賞「オペラ・アワーズ」の生涯功労賞を受賞。マドリード市から50キロ、アバントス山の斜面に広がるサン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアルにあるホールがコンサートホールが「テレサ・ベルガンサ・オーディトリアム」と改名している。

写真:Universal Music


    音楽プロフィールはこちら ▷



関連記事

  1. ワルシャワ発 〓 第18回「ショパン国際ピアノ・コンクール」予備予選の開催延期

  2. 東京発 〓 東フィルが2023シーズンのラインナップを発表

  3. ロイトリンゲン発 〓 ヴュルテンベルク・フィルが首席指揮者のアリアーヌ・マティアクとの契約を延長

  4. ブリュッセル発 〓 エリザベート王妃国際音楽コンクールは開催へ

  5. ジュネーブ発 〓 スイス・ロマンド管弦楽団がジョナサン・ノットとの契約を延長、任期に期限なし

  6. 訃報 〓 ミレッラ・フレーニ(84)イタリアのソプラノ歌手

  7. クリーブランド発 〓 オーストリアの実業家がマーラーの交響曲第2番《復活》の自筆譜をクリーブランド管に寄贈

  8. ウィーン発 〓 ウィーン“第3のオペラハウス”、アン・デア・ウィーン劇場が2024/2025シーズンの公演ラインナップを発表

  9. 青島発 〓 メニューイン音楽学校が青島に中国校

  10. ブリュッセル発 〓 モネ劇場が無料のストリーミング配信を開始、その名も“ストリーミング・フェスティバル”

  11. プラハ発 〓 ラトルがチェコ・フィルの首席客演指揮者に

  12. チューリッヒ発 〓 ヴァイオリニストのダニエル・ホープがチューリッヒ室内管との契約を延長

  13. モンペリエ発 〓 モンペリエ国立オペラが《ウエルテル》をストリーミング配信

  14. マドリッド発 〓 テアトロ・レアルが音楽監督のアイヴァー・ボルトンとの契約を延長

  15. バルセロナ発 〓 リセウ大劇場が《ローエングリン》の公演をキャンセル

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。