訃報 〓 斎藤雅広(62)日本のピアニスト

2021/08/17
【最終更新日】2023/02/06

ピアニストの斎藤雅広(Masahiro Saito)が8月8日に亡くなった。62歳だった。死因は不明。葬儀は近親者で営まれたという。誰もが認める技巧に支えられた自由闊達で雄弁な表現で高い評価を受ける一方、軽妙なトーク、アクションを交えたステージや数々のテレビ、ラジオ出演など、クラシック音楽界では貴重なエンターテイナーとして活躍した。

東京・渋谷区の生まれで、父親は藤原歌劇団のバリトン歌手の斎藤達雄。東京芸術大学付属高校、大学、大学院で学び、その間、18歳の時に日本音楽コンクールで優勝、翌年にNHK交響楽団との共演でデビューした。また、ハリーナ・チェルニー=ステファンスカに才能を認められ、その招きでポーランド・クラコフに留学。帰国後はソリストとして、NHK交響楽団をはじめとする国内の主要オーケストラと共演を重ねた。

また、ヴァイオリンの巨匠ヨゼフ・スークに室内楽の名手として認められ、ペーター・シュミードルやヴォルフガング・シュルツ、エルンスト・オッテンザマーといったウィーン・フィルハーモニー管弦楽団やベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、パリ管弦楽団のメンバーらとも共演を重ねた。1990年にはヤナーチェク弦楽四重奏団と大阪いずみホールのオープニングを飾った。

その一方で、「斎藤雅広と仲間たち」と題したファミリーコンサートを行ってクラシック音楽の普及に情熱を注いだ。「名曲アルバム」や「ニューイヤー・オペラコンサート」、「趣味悠々」など数多くのテレビ番組に出演を重ね、中でも、NHK教育テレの「トゥトゥアンサンブル」では「キーボーズ」として人気を博した。お茶の間に音楽を届けようとする姿勢を貫いた。

また、録音も多く、ソロから室内楽など41タイトルをリリース。2012年はデビュー35年をするアルバム「79年のリサイタル」が音楽各紙に絶賛された。また、作曲・編曲も手がけて多数の楽譜も出版されている。日本音楽コンクールなど、さまざまなコンクールの審査委員も務め、各地でマスター・クラスを開くなど、亡くなるまで多方面で多彩な活動を続けていた。

写真:ASPEN


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