ドイツのメゾ・ソプラノ歌手クリスタ・ルートヴィヒ(Christa Ludwig)が4月24日にウィーン近郊クロスターノイブルクの自宅で亡くなった。93歳だった。20世紀後半の巨匠たちに重用され、1960年頃からドラマティック・ソプラノの役もレパートリーに加え、ドイツを代表するプリマ・ドンナとしてオペラ、リートの分野で国際的に活躍した。
ベルリン生まれで、両親はベルリン・フォルクスオーパーの歌手。フランクフルト音楽院で学び、1946年にハンブルクで《こうもり》のオルロフスキー役でデビュー。ダルムシュタット、ハノーバーの劇場を経て、1954年にはザルツブルク音楽祭で《フィガロの結婚》のケルビーノ役を歌って一躍脚光を浴びた。
翌年、カール・ベームの招きでウィーン国立歌劇場に迎えられ、1962年に宮廷歌手。1994年に《エレクトラ》のクリテムネストラを歌って国立歌劇場を去るまで769回出演し、42の役を歌っている。また、1950年代後半のザルツブルク音楽祭では《薔薇の騎士》や《コジ・ファン・トゥッテ》でのシュヴァルツコップとの共演が大きな話題を集めた。
1959年にはケルビーノ役で、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場にデビュー。1993年までに121出演で15の役を歌っている。また、1966年にバイロイト音楽祭、1969年にロンドンのロイヤル・オペラにデビュー。ミラノ・スカラ座ではマリア・カラスとの共演も実現した。
暖かい声質と豊かな声量、精緻な表現力でオペラ以外にコンサートや合唱のソリストも多く務め、ベームだけでなく、ヘルベルト・フォン・カラヤンやレナード・バーンスタインら名だたる巨匠たちに重用された。マーラーの作品の評価は特別で、《大地の歌》だけでも、カラヤンとバーンスタイン以外にオットー・クレンペラー、カルロス・クライバー、ヴァーツラフ・ノイマンらと共演している。
私生活では1957年にバス・バリトン歌手のヴァルター・ベリーと結婚。1970年の離婚後、1972年にフランスの俳優で演出家のポール・エミール・デベと再婚した。1993年から1994年にかけて引退ツアーを行って舞台を離れた後はザルツブルク音楽祭のマスター・クラスなど、後進の指導に当たった。ドイツ、オーストリア、フランスの文化勲章の他、授章多数。
写真:Wiener Staatsoper
訃報 〓 クリスタ・ルートヴィヒ(93)ドイツのメゾ・ソプラノ歌手
2021/04/26
【最終更新日】2023/02/06
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