訃報 〓 クリスタ・ルートヴィヒ(93)ドイツのメゾ・ソプラノ歌手

2021/04/26
【最終更新日】2023/02/06

ドイツのメゾ・ソプラノ歌手クリスタ・ルートヴィヒ(Christa Ludwig)が4月24日にウィーン近郊クロスターノイブルクの自宅で亡くなった。93歳だった。20世紀後半の巨匠たちに重用され、1960年頃からドラマティック・ソプラノの役もレパートリーに加え、ドイツを代表するプリマ・ドンナとしてオペラ、リートの分野で国際的に活躍した。

ベルリン生まれで、両親はベルリン・フォルクスオーパーの歌手。フランクフルト音楽院で学び、1946年にハンブルクで《こうもり》のオルロフスキー役でデビュー。ダルムシュタット、ハノーバーの劇場を経て、1954年にはザルツブルク音楽祭で《フィガロの結婚》のケルビーノ役を歌って一躍脚光を浴びた。

翌年、カール・ベームの招きでウィーン国立歌劇場に迎えられ、1962年に宮廷歌手。1994年に《エレクトラ》のクリテムネストラを歌って国立歌劇場を去るまで769回出演し、42の役を歌っている。また、1950年代後半のザルツブルク音楽祭では《薔薇の騎士》や《コジ・ファン・トゥッテ》でのシュヴァルツコップとの共演が大きな話題を集めた。

1959年にはケルビーノ役で、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場にデビュー。1993年までに121出演で15の役を歌っている。また、1966年にバイロイト音楽祭、1969年にロンドンのロイヤル・オペラにデビュー。ミラノ・スカラ座ではマリア・カラスとの共演も実現した。

暖かい声質と豊かな声量、精緻な表現力でオペラ以外にコンサートや合唱のソリストも多く務め、ベームだけでなく、ヘルベルト・フォン・カラヤンやレナード・バーンスタインら名だたる巨匠たちに重用された。マーラーの作品の評価は特別で、《大地の歌》だけでも、カラヤンとバーンスタイン以外にオットー・クレンペラー、カルロス・クライバー、ヴァーツラフ・ノイマンらと共演している。

私生活では1957年にバス・バリトン歌手のヴァルター・ベリーと結婚。1970年の離婚後、1972年にフランスの俳優で演出家のポール・エミール・デベと再婚した。1993年から1994年にかけて引退ツアーを行って舞台を離れた後はザルツブルク音楽祭のマスター・クラスなど、後進の指導に当たった。ドイツ、オーストリア、フランスの文化勲章の他、授章多数。

写真:Wiener Staatsoper


関連記事

  1. ライプツィヒ発 〓 ライプツィヒ歌劇場が3日からオペラ3作品をストリーミング配信

  2. ヘルシンキ発 〓 国立歌劇場の首席指揮者にハンヌ・リントゥ

  3. パリ発 〓 パリ国立オペラが2024/2025シーズンの公演ラインナップを発表

  4. シュヴェリーン発 〓 メクレンブルク州立劇場、コーミッシェ・オーパーもシーズン終了

  5. ベルリン発 〓 ムターがフェイスブック上で新型コロナウイルスの陽性反応が出たことを明らかに

  6. バイロイト発 〓 バイロイト音楽祭、2028年からの新しい《ニーベルングの指環》の指揮者はパブロ・エラス=カサド

  7. パリ発 〓 ヨナス・カウフマンとリュドヴィク・テジエの二人が芸術存続のための政府の行動求める署名運動をスタート

  8. ニューヨーク発 〓 米国唯一のオペラ月刊誌「オペラ・ニュース」が87年の歴史に幕

  9. 東京発 〓 第32回「高松宮殿下記念世界文化賞」、音楽部門はチェロのヨーヨー・マ

  10. パリ発 〓 パリ国立オペラが2025/2026シーズンの公演ラインナップを発表

  11. パリ発 〓 ポリーニの復帰は6月以降?

  12. ウィーン発 〓 国立歌劇場が新シーズン、2022/2023シーズンの公演ラインナップを発表

  13. ドレスデン発 〓 ドレスデン・フィルの首席客演指揮者にノルウェーのタビタ・ベルグルンド

  14. 訃報 〓 ルース・ファルコン(77)アメリカのソプラノ歌手

  15. ラスベガス発 〓 第64回「グラミー賞」発表

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。