指揮者の準・メルクル(Jun Märkl)のフェイスブックへの投稿が波紋を広げている。問題となっている投稿は、16日、17日に初めて客演する予定だったベオグラード・フィルハーモニー(Belgrade Philharmonic Orchestra)に対する批判。今回はロッシーニの《ウイリアム・テル》序曲、コルンゴルドのヴァイオリン協奏曲、メンデルスゾーンの交響曲第4番《イタリア》を指揮する予定だったが、メルクルは直前にキャンセルしている。
メルクルは投稿の中で、オーケストラ側が契約事項を守らないので客演をキャンセルしたと報告。その理由として、オーケストラ側には何度も提案をしたが、それに対して何一つ肯定的な返答がなかったと説明、ベオグラード・フィルとは今後仕事をする気がないことを明らかにした。さらに、オーケストラ側が自分を騙そうとしていると感じたと吐露。他の指揮者に対して、このオーケストラは信用ならない、一緒に仕事をしないように、と投稿に書き込んだ。
これにベオグラード・フィルが猛反発、欧米の音楽メディアに声明を出す事態に。反論では、キャンセルに至った原因は指揮者が契約書の一部について履行を拒否したことにあると指摘。オーケストラはセルビア共和国の法律に従うのは当たり前で、そのことはエージェントにも事前に説明、契約書にも明記されていると主張した。さらに、リハーサル開始まで60時間を切った時点でのキャンセルはプロにあるまじき行為で、ベオグラードの聴衆、楽団員、マネージメントに対する侮辱であるとした。また、他の音楽家に一緒に仕事をしないようにと呼びかけたメルクルの行為を強く批判、契約不履行で訴える可能性も示唆している。
しかも、騒動はそれで収まらず、そこにベオグラード・フィルの首席指揮者を務めるドイツ人指揮者のガブリエル・フェルツ(Gabriel Feltz)も参戦。実際の原因が何かについては知らされていないと前置きしながらも、オーケストラとの10年来の付き合いを踏まえ、メルクルの主張するようなことがあったとは思えない、自分の周りには再び共演したいという客演者ばかり、とオーケストラを擁護する声明を出した。怒りにまかせて書いたメルクルの投稿が思わぬ騒動に発展している。
写真:Slovenska filharmonia / Jan Lukas
ベオグラード発 〓 準・メルクルの投稿、思わぬ波紋
2020/01/15
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