パリ発 〓 デュトワの復帰、波高し

2019/02/02

ラジオ・フランスの報道によると、エマニュエル・クリヴィヌの代役にシャルル・デュトワ(Charles Dutoit)を起用したことについて、フランス国立管弦楽団(Orchestre national de France)の事務局がオーケストラのメンバーに賛否を問うたところ、83人による投票で反対が6割を占めたという。デュトワを招くという決定が投票によって覆ることはないが、セクハラ疑惑が浮上したデュトワに対する反発がいまなお強いことが浮き彫りになった。

デュトワが指揮することになったのは、ベルリオーズの《ファウストの劫罰》を取り上げる2月3日のコンサート。フランスのオーケストラがフィルハーモニー・ド・パリで行う作曲家の生誕150周年記念行事の中心に位置付けられた公演で、セクハラ疑惑で指揮活動から遠ざかっていたデュトワにとってはフランス音楽界への復帰を意味した。事務局によると、代役を探しは困難を極め、スケジュールが取れても、曲目が曲目ということもあって15人以上の指揮者に断れたという。そのため、1991年から2001年までオーケストラの音楽監督を務め、作品について熟知しているデュトワの起用に落ち着いたという。

デュトワの起用については、セクハラ被害を訴えた8人の女性のうちの一人、フランス人の元ソプラノ歌手アン・ソフィー・シュミット(Anne-Sophie Schmidt)がその一報を聞いてすぐ「世界各地のアーティスト8人が勇気を出してデュトワ氏のセクハラを告発している中、同氏が起用されたことを非常に不快に感じる」という声明を出している。

写真:Priska Ketterer


関連記事

  1. ロサンゼルス発 〓 第91回「アカデミー賞」の作曲賞に「ブラックパンサー」のルドウィグ・ゴランソン

  2. ロンドン発 〓 トーマス・アレンがオペラから引退

  3. ウィーン発 〓 アン・デア・ウィーン劇場が2019/2020シーズンの公演ラインナップを発表

  4. ウィーン発 〓 イシュトヴァーン・ヴァルダイがハインリヒ・シフの後任に

  5. ローマ発 〓 映画音楽の大御所モリコーネが引退?

  6. ベルリン発 〓 ベルリン・ドイツ・オペラが2019/2020シーズンの公演ラインナップを発表した。

  7. シカゴ発 〓 ムーティーが労働協約めぐり楽団員を擁護

  8. ミュンヘン発 〓 バイエルン州立歌劇場が2019/2020シーズンの公演ラインナップを発表

  9. 北京発 〓 第1回「中国国際音楽コンクール」が閉幕、優勝はカナダのトニー・ユン

  10. ローマ発 〓 18歳から25歳限定で2ユーロのオペラ鑑賞チケット発売

  11. 東京発 〓 第18回「東京国際音楽コンクール」指揮部門で沖澤のどか優勝

  12. ワシントン発 〓 ナショナル交響楽団がジャナンドレア・ノセダとの契約を延長

  13. バイロイト音楽祭 〓 2019年の《タンホイザー》でゲルギエフが音楽祭デビュー

  14. アムステルダム発 〓 ホルンのケイティ・ウーリーがロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席奏者に

  15. ニューヨーク発 〓 シカゴ響のストライキへの支援の輪広がる

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。