ベルギーのバス・バリトン歌手ジョゼ・ヴァン・ダム(José van Dam)が2月17日に亡くなった。85歳だった。巨匠指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンに見出されたことで国際的に活躍、オペラの一方、コンサート、オラトリオ、リートの歌手としても活躍した。
首都ブリュッセル近郊イクセルの生まれ。本名はジョゼフ・ヴァン・ダム(Joseph van Damme)で、17歳でブリュッセルの王立音楽院に入学、フレデリック・アンスパシュに学んで首席で卒業した。1960年、リエージュのワロン王立歌劇場でロッシーニ《セビリアの理髪師》のドン・バジリオ役でオペラ・デビューを果たした。
翌年にはパリ国立オペラと契約。5年間在籍する中で、ビゼーの『カルメン』のエスカミーリョ役で初の主要役を演じた。パリの後、ジュネーブ大剧院に2年間所属。1967年にはロリン・マゼール招かれてベルリン・ドイツ・オペラに移籍した。
大きな転機は20世紀を代表するスター指揮者のカラヤンに見出されたこと。1968年にザルツブルク音楽祭にデビューしてから出演を重ね、カラヤンとはドン・フェルナンド、フィガロ、ゴロー、アムフォルタスなどを歌い、その存在感を確固たるものにした。その後、世界の著名な歌劇場、国際的な音楽祭への出演を重ねた。
ベルリンには1973年まで在籍、1974年には「宮廷歌手」の称号が贈られている。1983年にはパリ国立オペラでメシアン《アッシジの聖フランチェスコ》の世界初演に参加、小澤征爾の指揮でタイトルロールを歌っている。1992年にザルツブルク音楽祭で、ピーター・セラーズの演出によって上演されたプロダクションでも称賛を浴びた。
オペラの一方、コンサート、オラトリオ、リートの歌手としての評価も高い。また、1988年にはジェラール・コルビオ監督の映画『仮面の中のアリア』に年老いたオペラ歌手の役で主演、その演技も評判を集めた。1998年にはアルベール国王から男爵の称号を授与され、1999年のフィリップ皇太子の結婚式でも演奏を披露している。
残された録音も膨大で、カラヤンとはモーツァルト《魔笛》、ベートーヴェン《フィデリオ》、ヴェルディ《ドン・カルロ》、ドビュッシー《ペレアスとメリザンド》、ワーグナー《パルジファル》などで共演している。
また、カラヤン以外とも、ゲオルグ・ショルティとのワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》やリヒャルト・シュトラウス《影のない女》、ミシェル・プラッソンとのグノー《ファウスト》やマスネ《ドン・ キショット》、小澤とのメシアン《アッシジの聖フランチェスコ》などの名録音がある。
2010年、ブリュッセルの王立モネ劇場の《ドン・キショット》に出演してオペラの舞台から引退。翌年からエリザベート王妃音楽院で後進の指導に当たっていた。国際的な受賞も多数あり、2024年には「オペラ・アワード2024」でも永年功労賞を受賞している。
写真:Nomi Baumgartl

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