訃報 〓 エンリケ・バティス(82)メキシコの指揮者

2025/04/07

メキシコを代表する指揮者のエンリケ・バティス(Enrique Batiz)が3月30日、母国メキシコで亡くなった。82歳だった。1971年に創設に関わったメキシコ州交響楽団を40年以上にわたって指揮。英国を中心に400を超える世界各地のオーケストラへに客演して国際的な活躍を続け、その独特な音楽作りで日本でも一部のマニアからカルト的人気を集めた。

メキシコ・シティ出身。5歳でピアニストとして公開演奏を行なうなど幼い頃から音楽的な才能を開花させ、長じて渡米、ダラスのサザン・メソジスト大学、ニューヨークのジュリアード音楽院で学んだ。1964年にはピアニストとして全米ツアー、1965年の「ロン=ティボー国際コンクール」のセミ・ファイナリストとなっている。

その後、1967年から1970年にかけてワルシャワのショパン音楽院に留学。ピアノの研鑽を続ける一方、スタニスワフ・ヴィスロツキから指揮を学んだ。1969年に帰国、メキシコ・シティーの国立芸術院(ベジャス・アルテス宮殿)でハラパ交響楽団を指揮して指揮者デビューを果たした。一方、1970年にはイタリアの「ブゾーニ国際ピアノ・コンクール」のファイナリストとなっている。

翌1971年にはメキシコ州交響楽団の共同創設者となり、音楽監督と首席指揮者に就任した。オーケストラとの関係は2017年にパーキンソン病で退任するまで、1980年代にメキシコの別のオーケストラを率いていた時期を除いて、40年以上にわたって続いた。数多くの海外ツアーを行い、多数の録音を残している。

ヨーロッパでは1984年以来、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団など、主に英国のオーケストラと数多く共演。1980年代にはロイヤル・フィルの首席客演指揮者も務めている。加えて、世界各地のオーケストラへに客演、その数は400を超えるという。

ロマン派の音楽を得意としており、メリハリを効かせた独特の音楽作りで一部で熱狂的なファンを獲得。録音も150タイトル以上残されており、ビゼーの管弦楽曲集やレスピーギのローマ三部作、チャイコフスキーの交響曲第6番《悲愴》やショスタコーヴィチの交響曲第5番《革命》など、個性的な名盤も多い。

写真:Secretaría de Cultura


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