訃報 〓 エルガー・ハワース(89)英国のトランペット奏者・指揮者・作曲家

2025/01/15

トランペット奏者、指揮者、作曲家として活躍した英国のエルガー・ハワース(Elgar Howarth)が1月13日に亡くなった。英国のブラスバンド界の大御所で、トランペット奏者としてはロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者として活躍。その後、指揮者としても精力的に活動し、また、数多くの作品を作曲。金管アンサンブル向けのムソルグスキーの組曲《展覧会の絵》の編曲を手掛けている。

カンノック生まれ。マンチェスターで育ち、父親のオリバーからコルネットとトランペットの手ほどきを受け、マンチェスター大学と王立マンチェスター音楽大学で作曲とトランペットを専攻。 ハリソン・バートウィッスル、ピーター・マックスウェル・デイヴィス、アレクサンダー・ゲール、ジョン・オグドンらと1950年代のマンチェスター楽派の創設メンバーとなった。

兵役後、トランペット奏者としてロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団に入団。その後、ロイヤル・フィルの首席奏者となり、後に楽団の会長も務めた。また、ロンドン・シンフォニエッタのトランペット奏者としても頻繁に演奏した。1967年にはビートルズの「マジカル・ミステリー・ツアー」のファンファーレの編曲を担当し、4人のトランペット奏者の1人として演奏している。

1970年代初頭、ロック・スターのフランク・ザッパの映画とアルバム「200 Motels」でロイヤル・フィルを指揮して指揮者としてのキャリアをスタート。1978年にはストックホルムのスウェーデン王立歌劇場でリゲティのオペラ《ル・グラン・マカーブル》の世界初演を指揮している。

一方で、グライムソープ・コリアリー・バンド、ブラック・ダイク・ミルズ・バンドをはじめとするブラスバンドとも活発に活動。ブラスバンド界に大きな影響を与えた。1974年と1975年には、グリムソープ・コリアリー・バンド、ブラック・ダイク・ミルズ・バンドを率いてロンドンの夏の音楽祭「BBCプロムス」に出演、ブラスバンドの「BBCプロムス」出演に道を拓いた。

バートウィッスルの他、ウィリアム・ウォルトンやハンス・ヴェルナー・ヘンツェ、武満徹などの現代作曲家に作品を委嘱する一方、自作も多くがブラスバンドのレパートリーとして広く演奏されている。

写真:Wise Music Classical


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