訃報 〓 レナータ・スコット(89)イタリアのソプラノ歌手

2023/08/17

20世紀を代表するオペラ歌手の一人、ソプラノのレナータ・スコット(Renata Scotto)が故郷イタリアのサヴォーナで亡くなった。89歳だった。ベルカント唱法の伝統を受け継いだオペラ歌手として、歌唱力、演技力に加えてその美貌で一時代を築いた。引退後はイタリアやニューヨークに設立したオペラ学校で指導に当たり、演出家としても活動していた。

14歳で声楽を始め、16歳でミラノに移って勉強を続けていた1952年、18歳でミラノのテアトロ・ヌオーヴォの《椿姫》でヴィオレッタを歌ってオペラ界にデビュー。翌1953年にスカラ座のオーディションでカタラーニ《ラ・ワリー》のウォルター役に抜擢され、マリオ・デル=モナコやレナータ・テバルディと共演して成功を収めた。

その後、一時的に声に変調をきたしたが、テノール歌手のアルフレート・クラウスの助言により克服。1957年には英国のエディンバラ音楽祭で、2度目の出演をキャンセルしたマリア・カラスの代役に起用され、急きょ2日間でベッリーニ《夢遊病の女》のアミーナ役に取り組んで絶賛されて世界の檜舞台に躍り出た。

1965年、プッチーニ《蝶々夫人》のタイトルロールを歌ってニューヨークのメトロポリタン歌劇場にデビュー。その後、1987年まで定期的に出演を重ね、316公演、26の役柄を演じている。その間、ニューヨーク郊外のウエストチェスター・カウンティに住み、最後にデビュー時と同じ蝶々さんを歌って劇場に別れを告げた。

レパートリーは広く、歌った役柄は40を超える。蝶々さん役の他、ヴィオレッタや《愛の妙薬》のアディーナ、《ラ・ボエーム》のミミ、《三部作》のすべてのヒロイン、《ノルマ》のノルマの他、キャリアの後半では、《ばらの騎士》の元帥夫人、《パルジファル》のクンドリー、《エレクトラ》のクリュテムネストラを演じている。

オペラからの引退は2002年で、その後は指導者、国際コンクールの審査員、また、演出家としても活躍。プライベートでは1960年、スカラ座のオーケストラの第1ヴァイオリン奏者だったロレンツォ・アンセルミと結婚。2021年に亡くなったロレンツォは演奏家から彼女のマネージャーに転身、夫妻は一男一女をもうけている。

写真:Piper Artists Management

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