セクシャル・ハラスメント疑惑が浮上している世界的なオペラ歌手、プラシド・ドミンゴがメトロポリタン歌劇場(MET)の《マクベス》を降板した。《マクベス》には25日から計3回出演する予定だった。また、11月に出演する予定だった《蝶々夫人》の4回の公演も降板する。ドミンゴは「私に掛けられた疑いに強く異を唱えるとともに、法の手続きもなく非難される風潮を憂慮している」としてセクハラ行為は否定しているが、「私の出演が共演者の努力を損ねてしまいかねず、降板を申し出た。私の要求を寛大に受け入れてくれたMETに感謝している」という声明を発表した。
ドミンゴのセクシャル・ハラスメント疑惑は今年8月、米国のAP通信が歌手8人とダンサー1人がドミンゴのセクハラ行為を告白する記事を配信して浮上した。これを受けて、ドミンゴが2003年から総監督を務めるロサンゼルス・オペラが外部の専門家を交えて調査を始めたが、9月に入ってAP通信はさらに女性11人がセクハラ被害の告発する記事を配信した。ヨーロッパ系の演奏団体が調査を結果を待つとしたのとは対象的に、フィラデルフィア管弦楽団、サンフランシスコ・オペラ、ダラス・オペラなど米国の演奏団体は出演取り消しを表明。容認派はMETだけだった。
米国の一部メディアは、METのオーケストラや合唱団など現場スタッフの間でドミンゴの出演について不満の声があり、MET内部からさらなる告発が行われる可能性を指摘していた。ピーター・ゲルブ総支配人と現場スタッフとの間でその出演についての話し合いの場も持たれていた。METは“自主降板”の後、「ドミンゴ氏はMETの今後の公演に出演しないことで合意しました。METとドミンゴ氏は同氏が降板する必要があるという点で同意しています」と声明を出し、ドミンゴとの今後の関係を一切断つと説明している。
ドミンゴのMETデビューは1968年、27歳の時。2番手歌手だった《アドリアーナ・ルクヴルール》の公演で、フランコ・コレッリがキャンセルしたことからその代役として公演初日にデビューした。以来、連続出演。これまで歌手として706回、指揮者として169回出演している。昨シーズン華々しくデビュー50年を祝ったところだった。最近はバリトン歌手として活動しており、今回の《マクベス》ではマクベス役を歌う予定で、アンナ・ネトレプコとの共演が話題になっていた。ジェリコ・ルチッチが代役として舞台に立つという。
写真:Metropolitan Opera / Ken Howard
ニューヨーク発 〓 ドミンゴがメトロポリタン歌劇場を“自主降板”
2019/09/26
【最終更新日】2019/10/17
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