米国のソプラノ歌手ロバータ・アレクサンダー(Roberta Alexander)が10月14日、オランダの首都アムステルダムで亡くなった。76歳だった。澄み切った温かみのある歌声と奥深い音楽的解釈が高く評価され、1983年から1991年までメトロポリタン歌劇場の首席ソプラノを務めた他、ヨーロッパの主要な歌劇場で活躍した。
米国バージニア州リンチバーグ生まれで、2歳の時に家族でオハイオ州イエロースプリングスに移住。母親がソプラノ歌手、父親が合唱指揮者という家庭に育ち、セントラル州立大学、ミシガン大学で学んだ後、23歳でオランダに渡り、ハーグ王立音楽院で研鑽を積んだ。
オペラ・デビューは1975年で、オランダ国立オペラのロッシーニ《結婚の変化》のファニー役で初舞台を踏んだ。その年、ヴィクトル・ウルマンの《アトランティスの皇帝》に参加している。1980年にはヒューストン・グランド・オペラに出演して米国デビューを果たした。その年はサンフランシスコ・オペラに、1981年にはサンタフェ・オペラに、続いて、1983年にはニューヨーク・メトロポリタン歌劇場にモーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》のツェルリーナ役でデビューと、米国にも活躍の場を広げた。
メトロポリタン歌劇場では1991年まで首席ソプラノを務め、ガーシュイン《ポーギーとベス》のベス、ヤナーチェク《イェヌーファ》のタイトルロール、モーツァルト《皇帝ティートの慈悲》のヴィッテリア、オッフェンバック《ホフマン物語》のアントニア、モーツァルトは《フィガロの結婚》のアルマヴィーヴァ伯爵夫人、《ドン・ジョヴァンニ》のドンナ・エルヴィラ、リヒャルト・シュトラウス《エレクトラ》の5番目の侍女などを演じている。
その間、1986年にはウィーン国立歌劇場にデビュー。 1989年には英国のグラインドボーン音楽祭で《イェヌーファ》のタイトルロールを演じて絶賛された。また、ニコラウス・アーノンクール率いるウィーン・コンツェントゥス・ムジクスとは、《テオドーラ》や《アポロとダフネ》といったヘンデルの作品、《ドン・ジョヴァンニ》や《イドメネオ》といったモーツァルトの作品で共演を重ね、録音も残している。
オペラには2019年まで出演。飾らない雄弁さで言葉と音楽を生き生きと表現する力を持ち、特にモーツァルトの作品で高く評価された。ソリストとしてはバッハ、ヘンデル、マーラーの歌曲などでは思慮深い歌唱で称賛を集めた。二度結婚しており、最初の夫君は指揮者のエド・デ・ワールト。
写真:ANP
訃報 〓 ロベルタ・アレクサンダー(76)米国のソプラノ歌手
2025/10/17
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