訃報 〓 大町陽一郎(90)日本の指揮者

2022/03/04
【最終更新日】2023/02/06

日本を代表する指揮者一人、大町陽一郎(Yoichiro Omachi)が18日、老衰で亡くなった。90歳だった。日本人で初めて欧州の歌劇場の常任指揮者となり、ウィーン国立歌劇場やベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮台にも立つなど、国際的な活躍を展開する日本人指揮者の先駆けだった。

1931年、東京生まれ。東京芸術大学作曲科に進んだが、指揮への興味が募り、指揮法を渡邊暁雄、クルト・ヴェスに師事。その後、1954年からウィーンに留学、国立音楽大学の指揮科でハンス・スワロフスキーやフランコ・フェラーラといった名伯楽に師事。また、カール・ベーム、ヘルベルト・フォン・カラヤンたちの薫陶も受けた。

1959年、日本人指揮者として戦後初めてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮。帰国後の1961年に東京フィルハーモニー交響楽団の常任指揮者に就任した(-1970)。1968年には旧・西ドイツのドルトムント市立歌劇場の常任指揮者に就任。欧州の歌劇場の常任指揮者となったのも日本人初で、オペラ、オペレッタ、バレエの公演を数多く手掛けた。

さらに1980年には、日本人として初めてウィーン国立歌劇場に登場、プッチーニ《蝶々夫人》を指揮した。またこの年、クリーヴランド管弦楽団を指揮して米国デビューも果たしている。1982年からはウィーン国立歌劇場の専属指揮者として活躍(-1984)。旧・東ドイツのベルリン国立歌劇場など、他の歌劇場にも客演している。

また、1988年より2年間、ケルン日本文化会館館長として日独文化交流に尽力、その功績により1992年にドイツ連邦共和国功労勲章「大功労十字」を授与された。ウインナ・ワルツに代表されるシュトラウス・ファミリーの音楽も得意で、日本ヨハン・シュトラウス協会の起ち上げにも尽力。1996年には、日本人初のウィーン市名誉ゴールド・メダルを受賞している。

1992年には日中修好20周年記念して上海歌劇院に招かれ、プッチーニ《トゥーランドット》の中国初演を、中国人キャストだけで実現させた。1995年には北京の中央歌劇院で再び《トゥーランドット》を指揮、それを受けて歌劇院の芸術名誉顧問に就任した。

教育の現場では、東京芸術大学オペラ科教授を務め、「クラシック音楽のすすめ」など現場の経験を踏まえて指揮者の役割について書いた著作も多い。

写真:Tokyo Philharmonic Orchestra


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