ウィーン古典派の録音でも知られるピアニストのスティーヴン・コヴァセヴィチ(Stephen Kovacevich)が10月27日に亡くなった。86歳だった。ロンドンを拠点に活動、20年前には脳卒中に倒れたが、懸命な努力によって演奏能力を取り戻して演奏活動を再開していた。
ロサンゼルス生まれで、クロアチア系の両親の下で育ち、11歳のときサンフランシスコでデビューした。18歳で渡英、マイラ・ヘスに師事、その後、ロンドンを拠点に活動した。国際的な活動は1961年、21歳でウィグモア・ホールでデビューしてから。1965年にコリン・デイヴィス指揮のベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番《皇帝》で注目を集め、1967年にはニューヨークにもデビューした。
ベートーヴェンやシューベルト、ブラームスといったドイツ・ロマン派を得意とし、ベートーヴェンの演奏では、感情を音楽の流れに乗せ、楽想の変わるときなどの微妙なテンポ・ルバートが独特な流れを作り出すといった独自のスタイルを確立している。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集をはじめ、録音は数多く残されており、ヴォルフガング・ザヴァリッシュ指揮のロンドン・フィルハーモー管弦楽団とのブラームスのピアノ協奏曲第1番の録音は数々の賞を受賞。デイヴィス指揮のBBC交響楽団とのバルトークのピアノ協奏曲第2番の録音はエジソン賞を受賞している。
また、1984年以降は指揮者としても活動を始め、ヨーロッパ室内管弦楽団、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ、バーミンガム市交響楽団、ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック、バンクーバー交響楽団、ロサンゼルス・フィルハーモニック管弦楽団とも定期的に共演。オーストラリア室内管弦楽団からは首席客演指揮者に招かれている。
熱狂的なテニス愛好者としても有名で、チェロのジャクリーヌ・デュ・プレ、ピアノのマルタ・アルゲリッチとの交際でも知られ、1970年代半ばからのアルゲリッチとの間では“3人目の夫”という深い関係にあり、写真家となった娘ステファニーをもうけている。
写真:Warner Music


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