訃報 〓 スティーヴン・コヴァセヴィチ(86)英国のピアニスト

2026/10/29
【最終更新日】2026/10/31

ウィーン古典派の録音でも知られるピアニストのスティーヴン・コヴァセヴィチ(Stephen Kovacevich)が10月27日に亡くなった。86歳だった。ロンドンを拠点に活動、20年前には脳卒中に倒れたが、懸命な努力によって演奏能力を取り戻して演奏活動を再開していた。

ロサンゼルス生まれで、クロアチア系の両親の下で育ち、11歳のときサンフランシスコでデビューした。18歳で渡英、マイラ・ヘスに師事、その後、ロンドンを拠点に活動した。国際的な活動は1961年、21歳でウィグモア・ホールでデビューしてから。1965年にコリン・デイヴィス指揮のベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番《皇帝》で注目を集め、1967年にはニューヨークにもデビューした。

ベートーヴェンやシューベルト、ブラームスといったドイツ・ロマン派を得意とし、ベートーヴェンの演奏では、感情を音楽の流れに乗せ、楽想の変わるときなどの微妙なテンポ・ルバートが独特な流れを作り出すといった独自のスタイルを確立している。

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集をはじめ、録音は数多く残されており、ヴォルフガング・ザヴァリッシュ指揮のロンドン・フィルハーモー管弦楽団とのブラームスのピアノ協奏曲第1番の録音は数々の賞を受賞。デイヴィス指揮のBBC交響楽団とのバルトークのピアノ協奏曲第2番の録音はエジソン賞を受賞している。

また、1984年以降は指揮者としても活動を始め、ヨーロッパ室内管弦楽団、ロンドン・モーツァルト・プレイヤーズ、バーミンガム市交響楽団、ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック、バンクーバー交響楽団、ロサンゼルス・フィルハーモニック管弦楽団とも定期的に共演。オーストラリア室内管弦楽団からは首席客演指揮者に招かれている。

熱狂的なテニス愛好者としても有名で、チェロのジャクリーヌ・デュ・プレ、ピアノのマルタ・アルゲリッチとの交際でも知られ、1970年代半ばからのアルゲリッチとの間では“3人目の夫”という深い関係にあり、写真家となった娘ステファニーをもうけている。

写真:Warner Music





関連記事

  1. ロンドン発 〓 指揮者のウラディーミル・ユロフスキが大英帝国勲章ナイト・コマンダー章を受章

  2. 訃報 〓 オレグ・マイセンベルク(80)ウクライナ出身のピアニスト

  3. ロンドン発 〓 ヴァイオリンのコリーヌ・シャペユがクラウド・ファウンディングによる支援を呼びかけ、自身のがん治療で

  4. ロンドン発 〓 「最も忙しい指揮者」はまたまたネルソンス、クラシック統計ランキングで

  5. ロンドン発 〓 ロイヤル・オペラがグリゴーロに“黒判定”、メトロポリタン歌劇場も

  6. 訃報 〓 アリベルト・ライマン(88)ドイツの作曲家

  7. 訃報 〓 ガブリエレ・フェッロ(88)イタリアの指揮者

  8. ロンドン発 〓 ヤクブ・フルシャ、ロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督に

  9. 訃報 〓 間宮芳生(95)日本の作曲家

  10. ハンブルク発 〓 ガーディナーが新アンサンブル起ち上げ、同じ会場で古巣より1週間早くコンサートを開催、しかも、同じプログラムで

  11. 訃報 〓 メナヘム・プレスラー(99)米国のピアニスト

  12. 訃報 〓 カルステン・サブロヴスキ (60)ドイツのバス歌手

  13. ロンドン発 〓 ロイヤル・オペラ・ハウスがストリーミングのための新しいプラットフォームを起ち上げ

  14. エディンバラ発 〓 国際フェスティバルが2025年の公演ラインナップを発表

  15. グラスゴー発 〓 エメリャニチェフがスコットランド室内管との契約を延長

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。