英国のソプラノ歌手フェリシティ・ロット(Felicity Lott)が5月15日、イングランド南部サウス・ダウンズの自宅で亡くなった。79歳だった。英国を代表するオペラ歌手の一人で、世界各地の歌劇場で活躍。先週、末期がんであること公表、3日前にはラジオに出演して闘病生活について語っていた。
イギリス中南部の保養地チェルトナムの生まれ。5歳でピアノ、ヴァイオリンを始め、12歳から歌のレッスンをスタート。ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校でフランス語とラテン語の学位を取得した後、フランスに留学、グルノーブル音楽院で2年間声楽を学んだ。帰国後に王立音楽アカデミーを卒業している。
歌手デビューは1975年で、イングリッシュ・ナショナル・オペラでモーツァルト《魔笛》のパミーナ役を歌い、翌年にはヘンツェの《我々は川に来た》の世界初演に加わってロイヤル・オペラにデビューしている。すぐにロイヤル・オペラを支える歌手の一人となり、長身で気品を感じさせる佇まいから貴族の役柄を中心に出演を重ねた。
プーランク《カルメル派修道女の対話》のブランシェ、ブリテン《ピーター・グライムズ》のエレン・オーフォード、ワーグナー《ニュルンベルクのマイスタージンガー》のエーファ、モーツァルト《フィガロの結婚》のアルマヴィーヴァ伯爵夫人、リヒャルト・シュトラウス《薔薇の騎士》の元帥夫人などの役を演じている。
一方、グライドボーン音楽祭は合唱団に3度落選した後、1976年にリヒャルト・シュトラウス《カプリッチョ》の伯爵夫人役を歌ってデビューを果たし、1977年の音楽祭では《薔薇の騎士》で、元帥夫人ではなく、オクタヴィアンを40回歌っている。以後、定期的に出演、ストラヴィンスキー《放蕩者のなりゆき》のアン・トゥルーラヴ、レハール《メリー・ウィドウ》のタイトル・ロールなど数々の役を歌っている。
ウィーン国立歌劇場には1993年、リヒャルト・シュトラウス《カプリッチョ》の伯爵令嬢でデビュー。翌年にはカルロス・クライバーの指揮で元帥夫人を歌い、最大の当たり役となった。この時の公演はDVD化され、その直後のウィーン国立歌劇場の日本公演でもクライバーの指揮で歌って日本の聴衆に忘れ難い感動を与えている。
また、オペレッタにも積極的に出演。ヨハン・シュトラウスⅡ《こうもり》ロザリンデ、オッフェンバックの《美しきエレーヌ》や《ジェロルスタン女大公殿下》のタイトル・ロールなどを歌っている。一方で、コンサートの歌手としても国際的な評価を獲得、BBCプロムスやザルツブルク音楽祭など国際的な音楽祭にも数多く出演。アカデミー賞8部門を受賞した映画『アマデウス』オリジナル・サウンドトラックのソリストも務めた。
歌手としての息も長く、2019年にはミュージカルに進出。ソンドハイムの《フォリーズ》のハイディ・シラーを演じて絶賛された。最後のオペラ出演は2024年で、パリ国立オペラのドニゼッティ《連隊の娘》のクラーケントルプ公爵夫人を歌った。2025年5月、77歳でパリのアテネ劇場で最後のソロ歌リサイタルを行った。
英国では1990年に大英帝国勲章コマンダー章(CBE)、1996年にはデイム・コマンダー章(DBE)に叙せられている他、2001年にフランス政府からレジオンドヌール勲章シュヴァリエ章が授与され、2003年にバイエルン州政府から「宮廷歌手」の称号が贈られている。
写真:Opéra National de Lyon
訃報 〓 フェリシティ・ロット(79)英国を代表するソプラノ歌手
2026/05/17
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