訃報 〓 ミシェル・セネシャル(91)フランスのテノール歌手

2018/04/03
【最終更新日】2023/02/06

フランスの名テノール、ミシェル・セネシャル(Michel Sénéchal)が4月1日に亡くなった。91歳だった。独特の味わいのあるコミカルな演技を武器にした演技派として知られ、フランスを中心に長くオペラとオペレッタで活躍した。

パリ生まれで、パリの国立高等音楽院で声楽を学び、1950年にブリュッセルのモネ劇場、1952年にはパリ・オペラ座とオペラ・コミック座にデビュー。その年のジュネーヴ国際音楽コンクール声楽部門で第1位を獲得している。

主役はもちろん、脇役を演じても独特の存在感を見せ、レパートリーもラモーなどのバロック・オペラから、メシアンなどの現代音楽まで幅広く、録音も数多い。当たり役はオッフェンバック《ホフマン物語》の道化4役(アンドレ・コシュニーユ・フランツ・ピティキナッチョ)。1982年のメトロポリタン歌劇場デビュー時にも、その4役を一度に演じている。

また、モーツァルト《フィガロの結婚》ドン・バジリオ、ロッシーニ《オリー伯爵》オリー伯爵、チャイコフスキー《エフゲニー・オネーギン》ムッシュ・トリケ、プッチーニ《蝶々夫人》ゴローなど。いずれもくせの強い役が多く、それらを見事に演じることから、オペラ界の「性格俳優」とも評された。

母国のエクサン・プロヴァンス音楽祭、オーストリアのザルツブルク音楽祭といった国際的な音楽祭への出演も多く、1980年代以降は、国立オペラの声楽学校などで指導者としても活動した。また、指揮者のジョルジュ・プレートルらと「L’Art du chant français =ACF」という協会を設立して、フランス文化の振興の旗振り役を務めていた。

写真:Pedro Ruiz Le Devoir


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