ワシントン発 〓 「トランプ・ケネディー・センター」がナショナル・オペラを“追放”

2026/01/12

米国の首都ワシントンにある「トランプ・ケネディ・センター」が、センターに拠点を置いてきたナショナル・オペラとの関係を解消すると発表した。これまで独占契約を結んでいたが、「莫大な費用がかかり、選択肢と多様性が制限されていた。世界中、そして全米各地からオペラを招聘するための柔軟性と資金を確保するため」契約を終了することになったという。

声明では「オペラ・カンパニーは通常、チケット販売で費用の30~60%しか賄っておらず、残りは助成金や寄付で賄っている」と指摘。また、実験的作品の公演経費を《ウエスト・サイド・ストーリー》のような人気作品でカバーするといった興業的な手法について、「大規模な作品からの収益が小規模で革新的な作品の補助金となっている」と疑問符を付けている。

“大統領のオペラハウス”として知られてきたナショナル・オペラは今年、創設70周年。演出家のフランチェスカ・ザンベロが14シーズンにわたり芸術監督を務めており、2025/2026シーズンからロバート・スパーノが音楽監督に就任したばかり。今後は本拠地を失い、独立採算を余儀なくされるが、「ケネディ・センターを去ることに深く悲しみを感じる。今後数年間、新たな会場や新たな上演方法を模索していく中で、その使命と芸術的ビジョンに引き続き尽力していく」と述べ、既に独立したウェブサイトを開設し、他の会場との交渉をスタートさせた。

ケネディ・センターは1971年、第35代大統領ジョン・F・ケネディ(1917-1963)を記念する施設としてポトマック河畔にオープン。1997年に大改修が行われ、中にナショナル交響楽団が本拠地とするコンサート・ホール(2,442名収容)、オペラ・ハウス(2,300名収容)、アイゼンハワー・シアター(1,100名収容)、ファミリー・シアター(324名収容)、テラス・シアター(513名収容)を持つ。年間の音楽や演劇など公演数は2,000を数え、約200万人が訪れる芸術の殿堂として知られてきた。

トランプ大統領は2期目の政権が発足してすぐ、理事長、会長らを更迭、首脳部を共和党系の側近で固めた。これにセンターの芸術顧問を務めるルネ・フレミングやナショナル響の芸術顧問を務めていたロック・ミュージシャンのベン・フォールズら民主党系の一部の芸術家が反発して辞任するなど共和党勢力対民主党勢力の衝突の場にもなってきた。

2月には大統領自らが理事長に就任。さらに年末になって理事会がそれまでの「ケネディ・センター」の名称を「トランプ・ケネディ・センター」に改名することを決議、すぐに表記が変更された。この動きにさらに公演をキャンセルするアーティストが出るなど反発が広がっていた。

写真;whitehouse.gov


関連記事

  1. ペルミ発 〓 ペルミ・オペラ・バレエ劇場の次期音楽監督に29歳のミグラン・アガザニアン

  2. 訃報 〓 オトマール・マーガ(90)ドイツの指揮者

  3. ベルリン発 〓 ドイツ響の次期首席指揮者兼音楽監督に山田和樹

  4. ベルリン発 〓 州立オペラが2021/2022シーズンの公演ラインナップを発表

  5. 東京発 〓 日本音楽財団が「フォイアマン」をカミーユ・トマに貸与

  6. ウィーン発 〓 国立歌劇場が新制作の《ファウスト》をストリーミング

  7. ロサンゼルス発 〓 第92回「アカデミー賞」の作曲賞に『ジョーカー』のヒドゥル・グドナドッティル

  8. ミラノ発 〓 スカラ座の《サロメ》は指揮者がメータからシャイーに

  9. ワイマール発 〓 演出家のアンドレア・モーゼスがワイマール国民劇場のオペラ監督に

  10. ミュンヘン発 〓 テノール歌手のダニエル・プロハスカにバイエルン州から「宮廷歌手」の称号

  11. テルアビブ発 〓 2020年の「オペラリア」はテルアビブで開催

  12. ミラノ発 〓 ミラノ市長がスカラ座にゲルギエフの解任を要求、ロシアのウクライナ進攻で

  13. ベルリン発 〓 ジョン・ウィリアムズ、2月で90歳。ベルリン・フィルとのライブ・アルバムのリリースあり、ケネディ・センターでは3日間のフェスティバルも

  14. 上海発 〓 若手歌手のための「オペラリア」、2026年は上海で

  15. ラヴィニア音楽祭 〓 マリン・オールソップが音楽祭の首席指揮者に就任

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。