[オペラハウス大全]シュトゥットガルト州立劇場

[劇場名]シュトゥットガルト州立劇場
     Staatstheater Stuttgart
[所在地]シュトゥットガルト … ドイツ
     Stuttgart … GERMANY
[開場年]1912年
[客席数]1,404席

…… バーデン=ヴュルテンベルク州立オペラ | Baden-Württemberger Staatsoper

[総監督]2018 ▷
 ヴィクトル・シェーナー / Viktor Schoner
[音楽総監督]2018 ▷
 コルネリウス・マイスター / Cornelius Meister
[バレエ監督]2018 ▷
 タマシュ・ディートリッヒ / Tammas Detrich

    劇場のサイトへ ▷

写真:Staatstheater Stuttgart

ドイツの歌劇場というと、バイエルン州立歌劇場やベルリン州立歌劇場、あるいはザクセン州立歌劇場(ドレスデン州立歌劇場=センパーオパー)などを思い浮かべる。いずれもオペラ上演を中心に据えた大規模な劇場で、歌劇場と呼ばれるに相応しい。その下の規模の劇場は、州立歌劇場を意味する「Staatsoper」ではなく、州立劇場を意味する「Staatstheater」という言い方になり、オペラだけでなく、演劇やバレエ、ミュージカルまで上演する総合劇場だ。

そうした、歌劇場ではない劇場で、オペラ通から一目も二目も置かれているのがこの、シュトゥットガルト州立劇場だ。州立ということなので、正式には、バーデン=ヴュルテンベルク州立劇場ということになる。例えば、ワーグナーの大作《ニーベルングの指環》4部作の上演は大劇場でも大変だが、それを4人の違った演出家を起用して上演してみたり、旬の演出家の新作を大胆に上演したり。通たちをくすぐる術を熟知しているというのか、何かと話題を集める。

もちろん、そういうことができるのは、それを裏打ちする実力があるから。例えば、ドイツのオペラ雑誌「オペルンヴェルト」の2020年の「年間最優秀合唱団」はここの合唱団。なんと、13回目の受賞だ。また、クラウス・ツェーラインがオペラ監督、総監督を務めた1991年から2006年までの15年の間に、音楽監督にローター・ツァグロセクらを起用して、「年間最優秀オペラハウス」に6度選ばれている。

バーデン=ヴュルテンベルク州の州都シュトゥットガルトはミュンヘンへ車で2時間、フランクフルトへ1時間半、欧州議会があるフランス・ストラスブールまで1時間半、スイスのチューリッヒへも2時間半というヨーロッパの“へそ”ともいえる位置にあり、ポルシェやボッシュなどドイツを代表する世界的な企業の本社が集まる。意外なところでは、冷戦の名残りでもある米国の欧州軍司令部もこの街に存在する。

そうした街の経済力もこの街の強み。バロック音楽演奏の先駆けとなったカール・ミュンヒンガー率いる室内管弦楽団も、戦後すぐ1945年にこの街で産声を上げている。国際経済研究所が選ぶ「文化首都」に2020年も選ばれた。人口に対する劇場の客席数や観客動員数、文化セクターで働く人間の割合などから選ばれるが、要は、街の文化度が高いわけだ。

この劇場が凄いのは、オペラと肩を並べて、バレエ団もまた国際的に有名を轟かせていることだろう。ジョン・ノイマイヤーやウィリアム・フォーサイス、 イリ・キリアンといった世界的な振付師を数多く輩出。現在はバレエ団OBのタマシュ・デートリッヒに率いられ、ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエ団とドイツを代表するバレエ団の座をめぐって火花を散らしている。

現在の劇場はドイツ帝国末期の1912年ながら、前身の宮廷劇場から通算すると、カンパニーとしては350年以上の歴史を有する。現在の建物の設計はドイツの建築家マックス・リットマン(1862-1931)。彼はバイロイト祝祭劇場を模倣したミュンヘンのプリンス・レゲンテン劇場などを手掛けた巨匠で、正面こそ違うが、全体の構造はよく似ている。

年間の入場者が約23万人を数える総合劇場の雄ながら、第2次世界大戦中の空襲による破壊を免れた名建築は老朽化が激しく、手狭でリハーサル会場の不足も深刻だ。2018/2019シーズンには「Nord」という名称の新しい会場を新たに獲得したが、本体の大改修が急がれ、現地では2025年から開始する予定の大改修工事の方向性をめぐって、何かとかまびすしい。



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