フォーグラーの功績の一つに、2012年にピリオド/オリジナル楽器による音楽祭管弦楽団(Dresdner Festspielorchester)を立ち上げたことがある。創設に当たっては、強健王アウグスト2世時代のドレスデン宮廷楽団---ヨーハン・ゲオルク・ピゼンデルをはじめとする名手を集め、当時最高のアンサンブルと称えられた団体。ヴィヴァルディも作品RV577を献呈した---をイメージしたそうで、コンツェントゥス・ムジクス・ウィーン、18世紀オーケストラ、バルタザール=ノイマン・アンサンブル、レヴォリューショネル・エ・ロマンティック管弦楽団、イル・ジャルディーノ・アルモニコ、エンシェント管弦楽団などから精鋭が集まっている。
例えば、コンサートマスターのアレクサンダー・ヤニチェク。彼はスコットランド室内管弦楽団やカメラータ・ザルツブルクなどで活動してきたベテラン。首席チェロはコンチェルト・ケルンやアムステルダム・バロック管弦楽団のヴェルナー・マツケ、オーボエにはコンチェルト・ケルンやムジカ・アンティクヮ・ケルンを経て、現在はイングリッシュ・バロック・ソロイスツで活躍するミヒャエル・ニーゼマン、トランペットはヴォルフガング・ガイスベック、といった名が並ぶ。2017年には前年までコアメンバーを務めていた佐藤俊介は不参加だったが、その代わりに18世紀オーケストラの森田芳子が加わっている。
また、音楽祭管弦楽団はプログラム編成もなかなかユニークで、2013年には珍しいリヒャルト・シュトラウスの歌劇《火の欠乏》、2016年にはハイドンの《天地創造》といった作品を取り上げている。その一方で、シューマンの交響曲ツィクルスも始めており、2016年には初の公式アルバムとしてチェロ協奏曲と交響曲第2番をリリースした。2017年は音楽祭の40周年記念ということもあり、音楽祭管弦楽団も公演の数が多く、開幕前の4月30日の特別コンサートを皮切りに、他の都市へのツアーを含む以下の5演目8公演(含ワークショップ)が組まれた。
[4月30日=文化宮殿 / 特別コンサート]
ヴェーバー:歌劇《魔弾の射手》序曲
ベートーヴェン:三重協奏曲(独奏:ニコラ・ベネデッティ、フォーグラー、アレクサンドル・メルニコフ)
シューマン:交響曲第4番
[5月2、3日=ハンブルク・エルプフィルハーモニー]
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番(独奏:マルティン・シュタットフェルト)
バッハ:チェロ・ソナタ(フォーグラーとシュタットフェルト)
シューマン:チェロ協奏曲と交響曲第4番
[6月10日=聖母教会、11日=ベルリン・フィルハーモニー]
ワーグナー:歌劇《リエンツィ》序曲
リヒャルト・シュトラウス:4つの最後の歌(独唱ヴァルトラウト・マイヤー)
ベートーヴェン:交響曲第3番《英雄》
※ 10日の午前中にはワークショップ・コンサートも開催
[6月17日=ノイマルクト]
野外公演で、ワーグナー、ベートーヴェン、スメタナ、ヴェルディ、ビゼーなど
[6月18日=文化宮殿 / 閉幕コンサート]
ベートーヴェン:歌劇《レオノーレ》