バイロイト音楽祭 | Bayreuther Festspiele

[開催都市]Bayreuth … Germany
      バイロイト … ドイツ
[開催時期]2023:7.24 … 8.28

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ドイツの作曲家ワーグナーの、オペラと楽劇だけを上演している音楽祭。会期は7月下旬から8月末。彼の最高傑作とされ、通称《リング》の愛称で呼ばれている楽劇《ニーベルングの指環》全4部作上演のため、作曲家自身によって創設された。

会場の「祝祭劇場」は、彼の熱烈な支援者だったバイエルン国王ルートヴィヒ2世の援助で建てられた専用劇場で、オーケストラ・ピットがステージの下にある珍しい構造で、それが活きて深々とした響きが堂を満たす。

《リング》4部作は基本的に5年おきに演出が変わる。4年間の上演が終わると、1年休んで、新演出のプロダクションが上演されるという流れ。2020年からは、バレンティン・シュワルツの新しい演出が登場する予定だった。

ところが、2019年末から世界は新型コロナウイルスの大流行に見舞われ、2020年に入って、作曲家の曾孫で音楽祭の総監督を務めるカタリーナ・ワーグナーが病気療養に入ったこともあって音楽祭は中止された。

2021年の音楽祭は無事開催され、オクサーナ・リーニフが音楽祭初の女性指揮者として《さまよえるオランダ人》を指揮して話題を集めたが、新しいシリーズの制作はそれに間に合わず、お披露目は2022年に先送りされた。

ところが…。新しいシリーズを指揮する予定だったピエタリ・インキネンが、2022年の音楽祭のリハーサルを始めたところで新型コロナウイルスに感染して降板。指揮者は《トリスタンとイゾルデ》を指揮して音楽祭デビューする予定だったコルネリウス・マイスターに代わり、その代役にマルクス・ポシュナーが起用されて音楽祭デビューするということになった。

しかも、話はそれで終わらず。《ワルキューレ》では、ヴォータン役のトマス・コニエチュニーが倒れ込んだ時に椅子が壊れて負傷、《神々の黄昏》でグンターを歌うためにバイロイト入りしていたミヒャエル・クプファー=ラデツキーが急きょ第3幕から代役に立って事なきを得るというトラブルも起きた。

極めつけは、大胆な読み替えを行ったバレンティン・シュワルツの演出で、これが史上最大といわれる激しいブーイングを浴びた。4部作は登場人物が多いだけでなく、その関係が複雑に絡み合うが、バレンティンはその関係にまで手を入れ、ジークフリートの父親はジークムントではなく、フンディングという荒唐無稽な設定にしている。

また、ブリュンヒルデがジークフリートに贈った愛馬グラーネは馬でなく彼女の愛人、という設定で、「ブリュンヒルデの自己犠牲」では、ブリュンヒルデが袋から取り出したグラーネの首を抱いて絶命するといった具合。これだけ突拍子もないと、非難が集中するのも無理はない。

読み替えに対するブーイングは音楽祭にとっては恒例であり、後に高く評価された演出もある。しかも、カタリーナ・ワーグナー自身が「レジーテアター=演出家主導の舞台劇」を標榜している。しかし、聴衆ばかりか、歌手やスタッフ、さまざまなメディアからここまで総スカンを喰らうと、後世の再評価に期待するといった話も色褪せる。

当然、カタリーナの路線に対する疑問の声も方々から上がっており、音楽祭を支えてきた存在で理事会に影響力を持つ「バイロイト友の会」が「バイロイトは舞台上で起こっていることよりも音楽が重要」という声明を出したことで、2025年で任期が切れるカタリーナの去就まで盤石ではないことが明らかになった。

カタリーナは、「レジーテアター」を堅持するため、2023年にはパブロ・ヘラス・カサドに新制作の「パルジファル」を、ナタリー・シュトゥッツマンに「タンホイザー」の再演を振らせるなど、目先の話題作りに必死。2024年には新制作の《トリスタンとイゾルデ》をセミヨン・ビシュコフ、2025年には新制作の《ニュルンベルクのマイスタージンガー》をダニエレ・ガッティの指揮に委ねることも前倒しで発表された。

そんな音楽祭ではあるが、指揮者も演出家も旬の人が起用され、強靱な声が求められる歌手陣も“ワグナー歌い”として自他共に認める実力派がずらりと顔を揃え、音楽祭のために臨時編成される祝祭管弦楽団にはドイツ国内から腕っこきが集まることに変わりはない。そこはさすが、ワーグナーの“聖地”だ。それだけに彼の熱烈なファン「ワグネリアン」たちにとってここに出掛けるのは一種の“巡礼”に近い。当然、チケットの争奪戦は熾烈を極める。

……… 2022年の公演

  ラインの黄金

  ワルキューレ

  ジークフリート

  神々の黄昏

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