[開催都市]
Bad Ischl … Austria
バート・イシュル … オーストリア
[開催時期]
2024:7.6 … 8.25
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ザルツブルクの東には景勝地「ザルツ・カンマーグート」が広がる。その中心都市がオーストリア最古の湯治場として知られるバート・イシュルだ。街には皇帝の夏の離宮「カイザー・ヴィラ」がいまも残る。
ヴィラは1854年、ハプスブルク帝国の最後の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世とエリザベート皇后(あの、シシィ!)の結婚の祝いに先帝からプレゼントされたもの。エリザベートは1898年に旅行中のジュネーヴでイタリア人の無政府主義者に刺されて非業の死を遂げるが、皇帝はその後もヴィラで過ごす生活を変えなかった。セルビア王国に対する宣戦布告に署名したのも、このヴィラ。翌日、バート・イシュルを去り、二度と戻らなかった。
この街はもう一つ、歴史的な建物がある。作曲家のレハールが晩年を過ごしたヴィラだ。レハールはハンガリーに生まれたドイツ人作曲家で、《メリー・ウィドウ》や《微笑みの国》といったオペレッタを数多く作曲。カールマンたちと20世紀初頭のウィンナ・オペレッタの第二黄金期、いわゆる「銀の時代」を牽引した。
1934年には《ジュディッタ》が念願適ってウィーン国立歌劇場で取り上げられたことで作曲活動から離れ、優雅な隠退生活に入った。ところが……。戦後になって第2次世界大戦中のナチス・ドイツへの協力が浮上。《メリー・ウィドウ》のスコアをヒトラーにプレゼントしていたといった話が明るみに出たのだ。それもあって晩年は沈黙を貫き、1948年に78歳で亡くなってこの街に眠る。
そんな街で毎年7月と8月、レハールのオペレッタを上演するフェスティバルが開催されている。レハールをテーマに据えた音楽祭はここだけだ。創設は1961年で、毎年3作品が上演されている。
フェスティバルが行われているのはこじんまりとした劇場。大きな劇場のような舞台機構がないので大掛かりなセットが組まれるわけではないし、有名な歌手が出演するわけでもないが、キャパが小さい分、伸び盛りの若手歌手を中心とした舞台と客席の間に一体感が生まれてアトホームな雰囲気。チケットも100ユーロ以下と、他の音楽祭に比べてぐっとリーズナブル。
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