[オペラハウス大全]ウィーン・フォルクスオーパー

[劇場名]ウィーン・フォルクスオーパー
     Volksoper Wien
[所在地]ウィーン … オーストリア
     Vienna … AUSTRIA
[開場年]1898年
[客席数]1,473席 + 立ち見102

…… ウィーン・フォルクスオーパー / Volksoper Wien

[総監督]2021 ▷
 ロッテ・デ・ベア / Lotte de Beer
[音楽監督]2021 ▷
 オメール・メイア・ヴェルバー / Omer Meir Wellber

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写真:Volksoper Wien

「フォルクスワーゲン」が「国民車」なら、「フォルクスオーパー」はさしずめ「国民劇場」ということになる。オペラのみならず、オペレッタからミュージカル、バレエやダンスまで、年間に300公演、それも30を超える多彩な演目を上演している。幅広い層から愛されているという意味で、その名に恥じない活躍ぶりで、中でも、オペレッタの上演には長い経験を持ち、“聖地”とまでいう人もいる。

しかし、元々はフランツ・ヨーゼフ一世在位50年を祝して建てられた演劇のための劇場で、1898年の開場時は「皇帝祝典市立劇場=Kaiser-Jubiläums-Stadttheater」と名付けられた。その後、「ウィーン市立劇場=Stadttheater Wien」となり、1903年からオペラやオペレッタの上演を手掛けるように。それを受けて翌1904年、名称も「フォルクスオーパー」に変更された。1906年には、作曲家のツェムリンスキーが初代カペルマイスター(首席指揮者)に就任、1907年にはプッチーニ《トスカ》のオーストリア初演がこの劇場で行われた。

1908年、指揮者のフェリックス・ワインガルトナーがマーラーの後任として当時のウィーン宮廷歌劇場の音楽監督、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任する。彼は歌劇場退任後も、ウィーン・フィルの常任指揮者は継続し、1919年から1924年にかけてフォルクスオーパーの音楽監督も兼任、そのため劇場はいわゆるウィーンの“第二劇場”的な存在となった。さらに第二次世界大戦後は空襲で破壊された国立歌劇場が1955年に再開するまで、“第一劇場”として使われた。

イタリア語で「オペレッタ」は「小さいオペラ」を意味するが、編成や演奏時間はオペラと変わらず、違いは内容的に軽い喜劇になっているところだろう。19世紀半ばにウィーンで「金の時代」と呼ばれる第1次ブームが起きた。パリでオッフェンバックの《天国と地獄》が大当たりし、その流れがウィーンに押し寄せた。この時はスッペ、ヨハン・シュトラウス2世、ミレッカー、ツィーラー、ツェラーといった作曲家が活躍した。次は20世紀初頭の第2次ブーム。こちらは「銀の時代」と呼ばれ、カールマンやレハール、ベナツキーたちがヒット作を連発した。

そんな歴史からドイツ圏では、オペレッタはいまも根強い人気を誇る。それを受け、大都市にはオペレッタの上演を中心とするその街の“第二劇場”的な劇場がある。例えば、ベルリンならコーミッシェ・オーパー、ミュンヘンならゲルトナープラッツ劇場、ドレスデンならザクセン州立オペレッタ劇場といった具合。かつてオーストリアと二重帝国を形成していたハンガリーのブダペストにも、国立オペレッタ劇場がある。そしてウィーンには、この劇場があるというわけだ。

現在の総監督はローベルト・マイヤー(-2007)。ブルク劇場の俳優だった経験を活かし、彼はオペレッタ、オペラ、ミュージカル、バレエに続く、5番目の看板として演芸を加えた。そのマイヤーは間もなく退任、2021/2022シーズンからオランダの演出家ロッテ・デ・ベアが着任する。ベアはさっそく音楽監督を久方ぶりに復活させ、人気指揮者のオメール・メイア・ヴェルバーを招聘した。ともに40歳という若いコンビがどんな新機軸を打ち出すか、この劇場からも目が離せない。

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