4日にしろ、5日にしろ、とにかくホールを出入りする人の多かったこと。会場に溢れていた熱気にまだやられている。大ホール(1,848席)、中ホール(804席)、小ホール(323席),おまけに湖畔では地元のブラスの演奏……。ロビーはも一つの“メイン会場”でもある。どれも無料で聴くことができる。「無料の公演を聴いてもらうだけで一日遊べますので、それだけ楽しんで帰ってくださっても構わないんです。もちろん1000円払って、有料の公演も聴いていただけたらもっといいですが」と沼尻はニヤリ。聴く人、演奏する人、それ以外の人、それぞれが出たり入ったりで、ホールの周辺、内部は人がごった返していた。
今回の音楽祭、その演奏会の多くが40分前後と、通常の演奏会に比べれば短いのが特徴(大植英次率いる大阪フィルハーモニー管弦楽団のコンサートでも1時間!)。その意味では昨年までの「ラ・フォル・ジュルネ」に似ているが、沼尻はこう反論する。「1日にいくつもの演奏会をはしごできたり、屋台が出たりというイベントは、元々は音楽大学の文化祭のスタイルで、昔からあるんです」。
音楽祭では今回、4つのコンセプトを打ち出した。第1が「音楽大学の文化祭の面白さを持って来る」。そこには沼尻が学生時代、母校・桐朋学園の『桐朋祭』の実行委員を6年間やった時の経験が反映されている。沼尻が本家はこちらと胸を張る原体験が今回の音楽祭に反映されている。音楽祭の開幕を飾ったのは、書道と音楽が連動する「書道パフォーマンス ~春の夢 筆 躍る~」。県下の高校書道部や書家たちが、音楽祭のテーマ「夢」に沿った音楽に合わせて「書」を描いていく。
第2のコンセプトは、「ホールを拠点としつつ、滋賀県内の各地でさまざまなコンサートを開く」。山中隆館長は「これは文字通り、音楽の楽しさをホールという“点”から県全域という“面”」に広げる試みです」と話す。実際、三井アウトレットパーク滋賀竜王、甲賀市あいこうか市民ホール、ルッチプラザ、ガリバーホール、イオンモール草津、大津市民会館、ひこね市文化プラザ エコーホール、滋賀県立文化産業交流会館、守山市民ホールほか、浜大津駅スカイクロス、なぎさ公園おまつり広場、西武大津店などでもミニコンサートを開催、地域との繋がりは大きく輪を広げた。
初田靖PRディレクターは「運営にはボランティア・スタッフを募集したのですが、20名近い枠はすぐに埋まりました。それ以外に石山高校の生徒さんたちも加わってくれています。音楽祭を盛り上げようという熱意のある方たちが集まって、地元のお祭りを手伝うような流れが生まれたらいいなと思います」と話す。