[オペラハウス大全]トゥールーズ・キャピトル劇場

[劇場名]トゥールーズ・キャピトル劇場
     Théâtre du Capitole de Toulouse
[所在地]トゥールーズ … フランス
     Toulouse … FRANCE
[創設年]1737年
[客席数]1,156席

…… トゥールーズ・キャピトル劇場 / Théâtre du Capitole de Toulouse

[芸術監督]2017 ▷
 クリストフ・グリスティ / Christophe Ghristi
[バレエ監督]2012 ▷
 カデル・ベラルビ / Kader Belarbi

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写真:Théâtre du Capitole de Toulouse

トゥールーズには、実はちょっとした思い出がある。新聞社に勤めていた1994年10月のこと。当時は社会部の所属で皇室を担当していて、天皇、皇后両陛下のフランス・スペインご訪問の同行取材の途中にこの街に降り立った。そして取材の合間に素晴らしいコンサートに出逢ったのだ。ロンドン・フィルの演奏会で、指揮はフランツ・ヴェルザー=メストだった。その話はまた別の機会に譲るが。

フランスには国立のオペラ・カンパニーがパリやリヨン、ラン(ストラスバーグ)やロレーヌ(ナンシー)など6団体あるが、トゥールーズとマルセイユはどちらも、市立のオペラ・カンパニーを独自に擁して活発な活動を展開している。さすが、フランス第3と第4の都市の面目躍如といったところで、ともに国際的な声楽コンクールを行っているところも共通している。

トゥールーズは煉瓦造りの建物が多いことから、“バラ色の街”と呼ばれる。周辺に建築に適した石が少なかったことから、豊富にあった泥炭を焼いたテラコッタ・レンガを積んだ建物が多くなったのだという。そして、その代表的な建物が「キャピトル」と呼ばれている、赤レンガと白の石灰岩で作られた市庁舎だ。この劇場は、そのバロック様式の市庁舎の中にある。

市庁舎のオープンは1736年。翌1737年、客席700弱の最初の劇場が設けられた。その劇場が1800年に閉鎖され、1818年に1950席の2代目が開場。しかし、1878年からまた閉鎖され、1880年に3代目の劇場がオープンした。ところが、これが1917年8月10日の火事で焼失。再開場は1923年になった。戦後1950年、その劇場を大改修して現在の劇場がオープン。さらに1974年、1996年にさらに大改修が加えられていまに至っている。

オペラ・カンパニーは合唱団、バレエ団を持ち、スタッフも250人強を数える。座付きオーケストラこそ抱えていないが、公演時にはキャピトル国立管弦楽団が駆け付ける。キャピトル国立管はその名前から解るように劇場の座付きのオーケストラから発展した。巨匠指揮者ミシェル・プラッソンが1968年から手塩に掛けてフランスを代表するオーケストラに育て上げた。1981年に国立の団体に昇格している。

2020年に訃報を書いた一人に演出家のニコラ・ジョエルがいる。亡くなったのは6月で、享年67歳。2009年から2014年にパリ国立オペラの総裁を務めたフランスのオペラ界の重鎮の一人だった。その彼が長く本拠地にしていたのがこの劇場で、1990年から2009年まで長く総監督を務めた。プラッソンしかり、ジョエルしかり、彼らの息の長い仕事の上にいま花が咲いている。

この街はフランス最大にして最古の大学を擁する“学生の街”であり、内外から学生の出入りが多い若い街でもある。飛行機メーカー「エアバス社」の本社に加え、現在は国立宇宙センターや欧州の航空宇宙産業の本社も集まってきており、「シテ・ド・レスパス」という宇宙についてのテーマパークもあって、最近では“宇宙の街”としても知られるようになった。

そして食通には、鴨料理の本場として知られ、専門店が軒を並べる。歴史的に繋がりの深いスペイン人、アルジェリアを中心とした北アフリカからの移民のコミュニティーもあって国際色も豊かで、常に新しい風が吹き込んでいる街でもある。その一方で、白いんげん豆やソーセージ、豚肉を使ったカスレといった伝統的な料理も、しっかり伝承している歴史を大事にする街でもある。

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