新作オペラFLASH ★ チューリヒ歌劇場 … 烙印を押された人々

シュレーカー:烙印を押された人々
9月23日 … チューリヒ歌劇場, チューリヒ

演出 … バリー・コスキー
出演 … クリストファー・パーヴス = アントニオット・アドルノ公爵 / トーマス・ヨハネス・マイヤー = アンドラーエ・ヴィテロッツォ・タマーレ伯爵 / アルベルト・ペセンドルファー = ジェノヴァ市長ロドヴィーコ・ナルディ / キャサリン・ネーグルスタッド = 市長の娘で画家カルロッタ・ナルディ / ジョン・ダザク = ジェノヴァの貴族アルヴィアーノ・サルヴァーゴ / 他
指揮 … ウラディーミル・ユロフスキ
オーケストラ … フィルハーモニア・チューリッヒ = チューリッヒ歌劇場管弦楽団
合唱 … チューリッヒ歌劇場合唱団

フランツ・シュレーカー(1878–1934)はモナコで生まれ、ベルリンで亡くなったオーストリアの作曲家。この《烙印を押された人々》は台本も本人が手掛けた作品で、1918年4月にフランクフルトで初演されている。芸術を愛する貴族が私財を投じて理想の島を建設する。しかし、当の本人は自らの醜い外見にコンプレックスを抱え、その島に近づこうとしない。それを良いことに、仲間の貴族たちはそこに若い娘を拉致して乱行を繰り広げている……。そんな破廉恥な話で始まる作品はスキャンダルに沈むと案じられたが、意外にも時代に歓迎された。第1次世界大戦で荒廃し、価値観が、社会が大きく転換していく中で人々は刺激的な性的表現を密かに求めていた。上演回数が延べ1000回を超える人気作品となり、シュレーカーは寵児に。しかし、ユダヤ人である彼の作品には、台頭してきたナチスによって「退廃音楽」の烙印を押されてしまう。やがて公職からも追放され、失意の中で彼は亡くなる。その初演から100年。いま最もアグレッシブな演出家の一人であるコスキーは、物語の舞台を石像が並ぶ“彫刻美術館”に移し、過激なベッド・シーンも登場させない。画家のカルロッタはアルヴィアーノの画は書かず、彫刻で彼の腕を制作する。その静けさがグロテスクなアルヴィアーノの内面を逆に際立たせる効果を生んでいる。

写真:Opernhaus Zürich / Monika Rittershaus

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