ブルガリア出身のユダヤ人ピアニスト、アレクシス・ワイセンベルク(1929 – 2012)が1972年のザルツブルク音楽祭で行ったリサイタルのライブ。会場は祝祭劇場ではなく、モーツァルテウム。順調にキャリアを開花させていた彼は1956年、突然の休養宣言を行って活動を休止。それから10年、活動を再開させたのは66年だった。翌年には20世紀を代表する指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンと共演して大成功、以後、コンサート、レコーディングに精力的に取り組み、輝かしいキャリアを重ねていく。しかもこの1972年、亡命以来28年ぶりの母国への帰国が実現、公私ともに充実の極みにいた。それだけにプログラム前半のラヴェル《クープランの墓》は彼の持ち味である澄んだ響きが隅々まで行き渡り、シューマンの幻想曲ハ長調も圧倒的なテクニックで香り立つような演奏。後半のムソルグスキーの組曲《展覧会の絵》もしかり。それぞれの曲が鮮やかな色彩で浮き彫りされ、最後まで聴く者を惹きつけて止まない。アンコール曲がすべて収録されているところもうれしい。艶やかなリスト、華のあるショパンから、会場の興奮を癒やすような端正な最後のJ.S.バッハまで、絶頂期のワイセンベルクの魅力がぎゅっと凝縮されている。2枚組。
……… 収録曲
CD1
・ラヴェル:クープランの墓
・シューマン:幻想曲ハ長調 op.17
CD2
・ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》
( ↓ アンコール)
・ショパン:夜想曲第20番嬰ハ短調(遺作)
・リスト:即興ワルツ
・ブラームス:狂詩曲ト短調
・モシュコフスキ:エチュード ヘ長調
・J.S.バッハ:コラール《主よ、人の望みよ喜びよ》 BWV.147
……… 演奏
アレクシス・ワイセンベルク(ピアノ)
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