[オペラハウス大全]ラン国立オペラ

[名称]
 ラン国立オペラ | Opera National Du Rhin
[所在地]
 ストラスブール … フランス | Strasbourg … FRANCE
[創設年]
 1821年
[客席]
 1100席
[総監督]2020 ▷
 アラン・ペルー | Alain Perroux
[音楽監督]2021 ▷
 アジス・ショハキモフ | Aziz Shokhakimov
[公式WEBサイト]
 https://www.opera-national-du-rhin.com

写真:Opera National Du Rhin

アルザス・ロレーヌ地方は、ドイツ語にすると、エルザス・ロートリンゲン地方となる。ドイツとフランスの間にあり、ストラスブール、ミュールーズ、コルマールといった街からなるこのエリアは、かつて両国の間で帰属がコロコロ変わった。1984年まで日本の教科書に載っていたフランスの作家アルフォンス・ドーデが書いた短編小説「最後の授業」は、併合をめぐる街の断面を生々しく描いていた。

その中心地ストラスブールは、古くから交通の要衝として栄えてきた。1770年にオーストリア皇女マリー・アントワネットがフランス国王ルイ16世に輿入れした際、この街で衣装をフランス製に着替えて気概を示したというエピソードも残る。現在はEU(欧州連合)の本会議場が置かれ、独仏国境のこの街はベルギーのブリュッセルと並んで、EUを象徴する街でもある。

ラン国立オペラは、そのストラスブールを拠点とするフランス国立のオペラ・カンパニーだ。オペラ部門の本拠地はこのストラスブール市立劇場で、バレエ部門はミュールーズ、若いオペラ歌手のトレーニング部門はコルマールといった具合に分散配置されている。3都市の芸術部門をまとめて国立のオペラ・カンパニーとなったのは1997年と、比較的最近のこと。年間200を超える公演を行い、毎年10万人以上を集めている。

市立劇場は1800年の火災で焼失した後に建てられた2代目の建物で、1821年の開場。フランス人建築家ジャン=ニコラス・ヴィヨ(1782–1857)の設計で、新古典主義のスタイルが採用された。1870年のストラスブール包囲線でドイツの砲撃を受けて部分的に破壊されたが、1873年に再開。1888年には建物後方に円形ドームの増築工事も行われた。

劇場に座付きのオーケストラが創設されたのは、1855年。戦前の市立歌劇場管弦楽団時代は、ハンス・プフィッツナーやオットー・クレンペラー、ジョージ・セル、ハンス・ロスバウトが“シェフ”を務めてきた名門だ。その市立歌劇場管を母体に誕生したのが、ストラスブール・フィルハーモニー管弦楽団で、1972年に名称を変えて再スタートを切った。彼らがラン国立オペラの公演のピットに入る所以はここにある。

オーケストラは再出発に当たり、アラン・ロンバールを“シェフ”に迎える。1972年に音楽監督に就任した時はまだ30を出たばかりだったが、“フランス期待の星”と期待を集め、「エラート」レーベルから新譜が次々にリリースされて、このコンビは1970年代に一世を風靡した。1976年には「大阪国際フェスティバル」にも客演している。

ただ、ロンバールは、自他ともに認める「イラちん」だったそうで、1983年に離任。その後をテオドール・グシュルバウアーが引き継いだ。ロンバールの一つ上、彼も1970年代に注目を集めた一人で、オーストリア出身でウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の日本公演に同行したこともあり、一時は“カール・ベームの後継者”とも呼ばれた。いまや二人の名前を音楽メディアで聞かなくなって久しいが…。

最近のニュースでは、ベルリオーズの権威ジョン・ネルソンの指揮で、演奏会形式で進められているシリーズが佳境を迎えている。2017年録音のオペラ《トロイ人》、2019年録音の劇的物語《ファウストの劫罰》など、ジョイス・ディドナートやマイケル・スパイレス、マリー=ニコル・ルミューやマリアンヌ・クレバッサといった旬の歌手を起用、内外の録音賞を数多く受賞している。

2021/2022シーズンからは新しい“シェフ”にウズベキスタン出身のアジス・ショハキモフを迎える。2010年の「グスタフ・マーラー国際指揮者コンクール」で第2位を獲得、2015年からデュッセルドルフのライン・ドイツ・オペラの指揮者陣に加わり、2016年には「ネスレ&ザルツブルク音楽祭青年指揮者コンクール」で優勝と、いまが伸び盛りの新星だ。新しい刺激を果敢に取り込む、新新の気風はいまも健在だ。

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